独立系ITコーディネータ(ITC)の私は、中小企業や公的機関のIT導入のプロジェクトマネジメントを支援している。今回は、プロジェクトのステークホルダー(利害関係者)を、プロジェクトに参画させることの重要性について触れてみたい。
IT導入プロジェクトに参加するステークホルダーのなかには、ネガティブな発言や些事にこだわるなど、プロジェクトの推進に支障をきたす人物がいる場合がある。プロジェクトマネージャーにとっては、やっかいな存在だ。彼らは体系的ではないものの、それなりにITの知識をもっているので、よけいに始末が悪い。自分の意見に固執するので、他のメンバーと衝突して、会議が前に進まないことが多い。説得に時間がかかる、会議の雰囲気が悪くなるなどの理由から、このような扱いにくいステークホルダーとは最小限の接点をもつだけでプロジェクトを進めようとしがちになる。
だが、このやり方は間違いだ。こうしたタフなステークホルダーを敬遠したままだと、後々、プロジェクト進行の妨げになる可能性が高いからだ。私自身、かつて失敗した経験がある。癖のあるメンバーの意見をスポイルして情報収集を行い、要件定義をして、RFP(提案依頼書)を仕上げた。しかし、いざ最終レビューの段階になって、レビュー会議でその人物から猛反発を受けて、3週間ほど足止めを食らってしまったのだ。
プロジェクト立ち上げの段階から、こうしたタフなステークホルダーとしっかりと向き合うことが大事だ。ユーザー自身もこのような人物を避ける傾向がある。避けてはいけない。ITCには、経営者など意思決定者だけでなく、組織全体のステークホルダーを認識し、分析する感性が求められる。厳しい船出になるかもしれないが、彼らの意見を無視したままではプロジェクトは完成しない。タフなステークホルダーほど、積極的にプロジェクトに参画させるように手を打つことが望ましい。(談)(真鍋武)