中堅・中小企業(SMB)に強い富士通マーケティングは、地方市場の開拓を加速している。この4月、本社が保有する提案ノウハウを地域の営業部隊に伝え、営業スキルを高める組織「サービスコンダクターセンター」を立ち上げた。SMBに適したソリューション群「AZSERVICE」の地方での販売拡大につなげることが狙いだ。初代センター長として新組織を率いるのは、自らの営業経験を踏まえて、商談支援の腕を磨いてきた樋本幸一郎さん。マネージャーとして支援チームの業務効率向上に取り組むだけでなく、全国各地の営業拠点に足を運び、現地に密着するかたちで支援を行っている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/長谷川博一)
樋本 幸一郎(ひもと こういちろう)
1991年、富士通ビジネスシステム(現富士通マーケティング)に入社。営業や企画に携わる。今年4月、ソリューションの組み合わせや商談の進め方などに関して全国の営業拠点を支援するために設置した新組織「サービスコンダクターセンター」の初代センター長に就任した。部下の行動を統括しながら、自ら各地の拠点を訪れ、現場で営業を支援する。
全国を飛び回って提案シナリオを地域に落とす
月
羽田→広島→福岡 「ただいま広島空港に着陸いたしました。シートベルトサインが消えるまで……」。今週も、週明けから地方出張が入った。今日は広島と福岡だ。広島市内での1時間の打ち合わせが終わったら、すぐに空港に戻り、九州支社での夜の懇親会に間に合うよう、福岡に飛ぶ。ビデオ会議で各拠点の営業スタッフと打ち合わせをすることもあるけれど、現地に行って直接話すことが、サービスコンダクターセンターの活動の肝心な部分だと思っている。
「お客様からインフラ更新について、ざっくりとした依頼を受けたが、提案をどう進めていけばいいのか教えてください」。センターには、毎日、全国の営業拠点からこうした問い合わせが寄せられる。私がコーディネートして、ヒントになる提案の先行事例を紹介したり、提案シナリオを描いたりすることによって、地域でお客様の心に響く提案ができるよう、ていねいにサポートする。私は、お客様のニーズに迅速に応える「スピード」を重視している。だからこそ、一番手っ取り早い直接の対話を徹底するために、毎週のように地域に出張しているのだ。
火
福岡→羽田 始発便で東京に戻った。2014年、当社が提案のキーワードに掲げているのは「クラウド」と「セキュリティ」。前日の福岡の懇親会では、「安全なクラウド活用でSMBのビジネスの底上げを提案する切り口が有効」ということを、飲みながら現地の営業スタッフに話した。
水木
東京・神田相生町のオフィス お客様の役に立つ商談とは何か──。サービスコンダクターセンターのスタッフは私と同じ営業出身者が多く、考え方や使う言葉は共通している。だから、支援活動についての議論は、いつも盛り上がる。今の仕事は、個人で予算をもつのではなく、全社の売り上げをバックアップしていくという点で、責任の重さもおもしろさも、これまでの仕事とはケタ違いだ。チャレンジ精神でビジネスを拡大したい。
足下の課題は、限られたセンターの人員でいかに効率よく動き、支援を充実させるかだ。社内にいる日は、業務効率化の対策を考えていることが多い。まず着手したのが、会議だ。センターができる前の旧体制では、だらだらと長引きがちで、4時間以上になる会議もあった。今は、会議を開く前にきちんとアジェンダを決め、事前の準備をしっかりしておくようにしている。発言する時間を決め、ポイントを絞って話すよう、口を酸っぱくして言っている。私は社歴が長いので、社内で知らない人はほとんどいない。販売パートナーとのパイプなど、社外の人脈もそれなりにもっている。彼らをうまく活用して、営業支援の強化を図りたい。
金
羽田→札幌 今日はまた地方に出る。4月にセンターが設立され、まだまだ訪問できていない拠点は多い。スケジュールはハードだが、こうした活動を通じて全社にサービスコンダクターセンターを評価してもらい、大きく飛躍したい。
私の営業方針を表す漢字は……「繋」
私は、当社が今年4月に新設したサービスコンダクターセンターのリーダーとして、東京本社と全国各地の営業拠点を「繋(つな)」げることをミッションに掲げている。「こんな提案をしてみて」という具合に、地域で活動している営業スタッフに本社で培った営業ノウハウを伝え、お客様を開拓したい。あらゆる機器がつながるようになった今の時代だからこそ、社内の営業組織がシームレスに連携し、提案活動を標準化していくことが大切だと考えている。