身長が高く、趣味のサーフィンで鍛えたスポーツマン体型ということもあって、「部下に『怖い』と思われがち」と苦笑する大嶋茂雄さん。自分はどういう人間かを知ってもらうために、部下たちを自宅に招いて歓談するホームパーティを開いている。大嶋さんは、京セラ コミュニケーションシステム(KCCS)で、セキュリティ事業の営業チームを率いて、他社製品の販売や独自サービスの提供に力を入れ、日本とアジアを舞台に強い存在感を発揮しようとしている。ホームパーティの効果は? 大嶋さんに語ってもらった。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/長谷川博一)
大嶋 茂雄(おおしま しげお)
日本大学経済学部卒業。2005年、中途採用で京セラ コミュニケーションシステム(KCCS)に入社。セキュリティ関連を中心に、営業に携わる。08年、課長に昇格し、マネージャーとしての経験を積む。13年4月、現職に就任。部下は6人。
ホームパーティを開いて部下に「素顔」をみせる
もともと部下をほめるのが苦手。からだがいかついからか、まわりの人に怖がられることが多い。以前は、仕事上の責任を果たせば十分、と考えていて、職場での人間関係をあまり重視していなかった。ところが1年ほど前に部長に就任し、部下はもちろん、会社全体を意識して動かなければならない立場になると、自分がどんな人間なのかを相手にきちんと伝えることや、相手がどう思っているのかを把握することの大切さがわかった。部下たちに「僕という人間」をどうしたら理解してもらえるのか──。上司に相談したら、「だったらホームパーティを開いてみろ」。そこで平日の夜、部下たち6人を自宅に招いて、食べて、飲んで、歓談する会を開いた。
僕の趣味はサーフィン。自宅には、ボードなど、サーフィンの道具一式を置いている。部下たちはそれを見て「大嶋さん、サーフィンやるんですか」と驚き、ここから趣味をテーマに話が弾んだ。僕の嫁と子どもも参加して、部下に自分の家族を紹介することで、部下たちとの距離が縮まったと実感している。最初は恥ずかしくて「どうかな」と思ったホームパーティだったが、大成功。今は定期的に開いている。KCCSは、アメーバ経営方式で、トップダウンとボトムアップの調和を図っている。ホームパーティなどで築いた部下との信頼関係は、チーム内で部下たちの意見を積極的に取り入れようとするとき、大きな武器になっている。
僕たちの部署は、セキュリティ事業の拡大に力を入れ、市場でNo.1になることを目標に掲げている。会社はこの方針をサポートしてくれているが、実は経営層から「取り扱う商材の種類を減らせ」という指示を受けた。部下たちにこの話を伝えたとき、「包括的なセキュリティを提案するために、現在のポートフォリオを絶対に維持しなければ」と強い反発があった。僕も、まさにその通りだと考え、担当役員に、なぜ今の商材が必要か、商材をどう生かして事業を拡大するかを説明して、ポートフォリオを減らさずに営業していくことの承諾を得た。さらに、セキュリティ業界では認知度が低い「KCCS」のブランドでは、これ以上売り上げを拡大することが難しいと考えて、独自のブランドを立ち上げる必要性を訴え、ゴーサインをもらった。これを機に、日本だけではなく、アジアも舞台にして、ビジネスを拡大していきたい。
役員の判断を押し返したり、自分でブランドをつくり出したり──。こうして、自由を与えてもらい、能動的に行動することができるのは、仕事の一番のやり甲斐だと思う。部下たちとの深い信頼関係を生かし、彼らに業界知識や英語の会話力など、日本とアジアでNo.1になるために必要なスキルを身につけることを促し、個人も事業も会社も成長させたい。
私の営業方針を表す漢字は……「志」
営業マネージャーとして、自分はどうなりたいのか、部署として何を目指すかという目標を常に設定し、その達成に向けて動くことが大事だ。組織を小さい単位に分け、それぞれを自立させる「アメーバ経営」を貫いているKCCSだから、事業計画を直接、経営層に訴えることが多い。そこで私は「何がしたいのか」という意志を明確に伝えることを重視している。現在は、セキュリティ業界でNo.1になることを目標に掲げ、そのために新しいブランドをつくって、部下とともに営業活動に励んでいる。