サポート事業を手がけるキューアンドエーは、法人向けビジネスに力を入れている。営業の最前線で活躍しているのは、夜も週末も休まずに顧客との接点づくりに精を出す野村勇人さん。5人の部下を率い、自らも営業現場に出て、大手通信会社に技術サポートなどを提案している。午前中にアポイントメントを入れ、そのままお客様とランチに行くことも。とにかく、商談以外の場をつくって、あらゆる情報を入手することによって、客先の潜在ニーズをつかむ。マネージャーとしては、部下に多くの権限を与え、自由に行動できる環境を整えている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/長谷川博一)
野村 勇人(のむら はやと)
1971年生まれ。日本システム開発など数社を経て、1997年、不動産事業の横河パイオニックスに入社。2000年、子会社の横河マルチメディアに出向。その後、キューアンドエーが横河マルチメディアからオンサイトサポート事業を引き受けて設立した横河キューアンドエーに籍を移し、営業に携わる。07年、キューアンドエー第一営業部の部長に就任。13年から現職。
潜在するニーズをつかんでサポート案件を受注
私はお客様に「提案」をしない。要件を聞いて製品やサービスを提案することがIT営業の通常の流れだと思うが、私が担当している大手通信会社はITを得意とする子会社がたくさんあるので、お客様の顕在するニーズに応えるだけでは、当社の強みは発揮できない。お客様に要件をたずねるのではなく、商談に加えて、日頃の飲み会やゴルフ場などでの話から、お客様が課題とは認識していない潜在するニーズを引き出し、「情報」として料理して提供する。こうすることで、お客様から「野村さんからは、事業の改善に有意義な情報が得られる」といわれるような信頼関係をつくって、受注を目指す。
部下には、営業マネージャーとしてのこうした動きをミツバチにたとえて話すことがある。ミツバチがいろいろな花を飛び回り、蜜を吸い上げてハチミツをつくるように、私はお客様に寄り添って情報を吸収する。そして、この情報を流通させながら現場を動かし、最終的にソリューションを提供する。ちなみに、商談を含めて、メモはほとんど取らない。細かくメモを取ると安心して仕事をした気になってしまうので、ポイントを絞って必要なキーワードだけを書き留めるようにしている。最大の財産である情報は、すべて頭のなかで処理して、忘れないうちに部下に指示したり、自分で行動を起こしたりする。
私は、営業部長として活動しながら、執行役員を務めている。こうした社内での立場を生かして、営業のプロセスに関しては、部下たちになるべく多くの権限を与えるようにしている。「このお客様に、こんなソリューションを納入したい」というように、部下と一緒に目的を明確にして、どうゴールにたどり着くかは、メンバーに任せる。ただし、案件の進捗については必ず報告させ、部下の営業手法に問題があって、お客様が怒っておられるときは、私が謝りに行ってフォローをする。その後で、部下を徹底的に叱る。部下の勉強のために、「何がいけなかったか」をはっきり指摘し、叱った後はまた普通に話しかけて、引き続き自由に行動するよう勇気づける。
私の哲学は、絶対に諦めないこと。一日は23時59分59秒までなので、最後まで頑張って成果を上げることを心がけ、これを部下にも求める。部下のなかに、パフォーマンスが私の想定より下だった人物がいる。ところが、最近、自分で斬新なサービスプランを考えて月額1000万円の案件を受注してきた。部下に自由を与え、諦めないマインドをもたせてきたことが効果を現してきた。
週末は趣味に没頭、と言いたいところだが、私は土日も営業マネージャーとして休まず、お客様との接点づくりに励んでいる。一緒にゴルフや釣りに行くことはもちろん、ご自宅に呼ばれ、バーベキューなどを楽しむこともある。常に人間関係を築き、営業活動に生かすことができる情報を手に入れるよう、ミツバチに負けずに活発に動いている。
私の営業方針を表す漢字は……「人」
営業という職には、開発や経理などと違って、その人のスキルを表す明確な資格が存在しない。だからこそ、お客様との人間関係を構築するために、「人」を前面に押し出して活動することが、営業の一番の“資格”だと考えている。お客様は、大手の通信会社で、お話しする相手は40~50代の方が多い。「お客様はどんな人物と仕事をしたいと思っておられるのか」を常に意識して、それに合わせてこちらの「人間力」を磨くようにしている。週末もお客様と一緒に過ごすことを優先して、人間関係の構築に励んでいる。