セキュリティへの注力姿勢を堅持
2014年度の政府予算では、サイバーセキュリティについて、内閣官房、経済産業省、総務省のほか、防衛省や警察庁など、全関連省庁を合わせて約542億円の予算を確保した。2013年度の予算額が、当初予算、補正予算を合わせても250億円ほどだったことを考えれば、2倍以上の予算を確保したことになる。なかでも経産省は、防衛関連の情報セキュリティ事業を除いて最大の予算を確保。情報処理推進機構(IPA)の運営費37.4億円のほか、17.4億円の予算を用意して、「サイバーセキュリティ経済基盤構築事業」を新規事業として立ち上げた。IPAの幹部は、「世の中のニーズが情報セキュリティに向いていることもあって、この分野に最も力を入れている」と語る。2015年度の概算要求でも、それぞれ36.1億円、17.7億円と、二つの事業には今年度と同水準の金額を要求した。セキュリティへの注力姿勢は来年度も引き続き継続するとみてよさそうだ。
日本政府や企業の関連予算はまだまだ小さい
IPAのセキュリティ関連事業は従来施策の継続という色彩が濃いが、サイバーセキュリティ経済基盤構築事業では、今年7月にIPAが正式に発足させた「サイバーレスキュー隊(J-CRAT)」を活用して、企業や公的機関のサイバー攻撃対策を支援する方針を打ち出している。施策の実務を遂行する専門家集団であるIPAを従来以上に積極的に活用するだけでなく、J-CRATを情報セキュリティ対策に関する高度な知識と技術をもつプロフェッショナルの育成母体としても機能させ、人材の質・量両面の底上げを図る。
今年7月のベネッセコーポレーションの顧客情報流出に限らず、国内では大規模な情報漏えい事件が相次いでいる。単に情報漏えいソリューションを導入するだけでなく、情報漏えい対策の組織づくりも同時に進めようという気運は高まりつつあるが、大手コンサルティングファームに所属する識者の一人は、「米国をはじめとするほかの先進国と比べて、日本政府や企業のセキュリティ関連予算はケタ外れに小さく、意識がまだまだ低い」と指摘する。自民党IT戦略特命委員長を務める平井たくや衆議院議員も、セキュリティ関連事業のさらなる予算確保を喫緊の課題と捉えている。IT利活用の根幹となる重要な領域だけに、十分な規模の予算を用意して一層の事業の充実を図る姿勢が、霞が関のリーダー達にも求められている。(おわり)(本多和幸)