番号制度を見据えて省内のシステムを刷新
国内IT産業の振興を担う経済産業省商務情報政策局は、今年度、「クラウド」や「ビッグデータ」をテーマに、新規の大型事業を立ち上げた。旬なテーマで予算を確保したかたちだが、来年度予算の概算要求では、一転、新規事業はなし。継続事業の予算要求額も今年度予算と同水準で、「おとなしめ」の印象だ。
ただ、注目すべき事業もいくつか打ち出している。今年6月、世界最先端IT国家創造宣言の改定内容が閣議決定されたが、その内容を踏まえた新しい取り組みがみられるのだ。
世界最先端IT国家創造宣言の改定の大きなポイントは、オープンデータの推進や社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の利活用を、政府内の業務改革、情報システム改革とセットで進めていく方針を示したことにある。
オープンデータの取り組みを先導すべく、経産省は「電子経済産業省構築事業」で、各省庁に先がけてオープンデータカタログサイト「Open DATA METI」の整備を進めてきた。来年度は、この事業で、マイナンバー制度によって割り振られる法人番号を利用した新しい省内システムの実証・検討を行う。
官民情報連携の仕組みを社会実装
具体的には、省内の各部局でバラバラに管理されている企業関連情報を、法人番号をベースに共有して政策立案に活用するための実証を行う。事業を担当する情報プロジェクト室の担当官は、「法人番号と紐づいた企業関連情報のデータベースを利用して行政手続きを電子化し、オープンデータ活用の利便性向上につなげたい」と力を込める。
また、官民の情報連携を効果的、効率的に行うためのITインフラ環境整備策として、「ID連携トラストフレームワーク」の社会実装に向けた検討も継続する。さまざまなインターネットサービスを利用する際に、利用者はユーザーIDやパスワードを使いまわす傾向があり、万一漏えいすると、不正アクセスの被害が拡大する恐れがある。ID連携トラストフレームワークのコンセプトは、官民のさまざまな組織が保有するユーザーIDなどの情報を、信頼できる情報セキュリティとポリシーを備えた認定組織間で共有し、利用者、事業者双方の利便性と安全・安心を確保するというものだ。情報セキュリティに関する問題意識が企業の間に広く浸透し始めている今だからこそ、急いで進めてほしい事業だ。(本多和幸)