今年8月、日本コンピューター・システムとアクセスが合併し、NCS&Aという新しい会社が生まれた。1966年に大阪で設立された老舗ソフトウェア開発会社の旧日本コンピューター・システムは、合併に先立つ今年4月、首都圏でのビジネス拡大を目指し、名古屋支店でパートナー販売の実績を上げてきた営業マネージャー、橋本透さんを東京本社に送り込んで、ソリューション営業部のリーダーに任じた。8人の部下は、関西出身と関東出身が半々。橋本さんは、西と東、それぞれの営業スタイルをうまく融合させ、パッケージメーカーとの協業を拡大しようとしている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/長谷川博一)
橋本 透(はしもと とおる)
1985年、日本コンピューター・システム(現NCS&A)に入社。NEC汎用機のアプリケーションSE(システムエンジニア)として、販売管理システムなどの開発に携わる。95年、営業部隊に異動。大阪と名古屋で、ソリューションの提案活動を担当する。2014年4月、東京本社に転勤。8人の部下をもつ。
メーカーとの協業で首都圏ビジネスを拡大
毎朝、必ず7時半に出社する。NCS&A東京本社がある江東区の豊洲は、建設ブームでオフィスビルが急増し、地下鉄有楽町線の豊洲駅は朝のラッシュ時、ものすごく混み合うことで知られている。私は、すし詰め状態は大の苦手。だから、ラッシュを避けて早めに会社に着くようにして、9時の朝礼までの90分を仕事に集中する時間として大切にしている。
「今期は業績が厳しい。今日もフットワークを軽くして、積極的にお客様を回りましょう」。朝礼で部下を励ます。実は、当社が首都圏ビジネスの拡大に掲げている新規開拓は、まだ軌道に乗っていない。正直なところ、案件の受注は難航している。大阪や名古屋ではそれなりに知名度があって、「何とかお願いします」と頭を下げて人情に訴えながら提案すれば受注できたが、競合が多く、ちょっとドライなところがある東京は、まったく環境が違う。しかし、提案先の母数は大きいので、能動的に動けば受注のチャンスはあると確信している。
部下が、午前中のお客様訪問から、がっかりした顔で戻ってきた。「『販売管理ツールはもう入っているからいらん』と言われてしもうた」。部下の半数は、私同様、この4月に単身赴任で大阪本社から東京本社に転勤してきた。そんな彼らに助言しているのは、うまくいかないときもあるかもしれないけれど、東京でも営業活動の「関西らしさ」を大切にして、自然体でお客様に接するということ。定期的に飲み会を開き、関西にいる家族の話をする場を設けるなどして、ケアを心がけている。
午後は、部下と一緒にパートナーを訪問。名古屋で営業課長を務めた3年の間、ずっとパッケージメーカーとの協業を進めてきた。今、東京でも内田洋行やOSKなどとの協業に力を入れている。今日は私の人脈を活用して、部下をパートナーの幹部に紹介した。これを皮切りに、このパートナーを部下に任せて、部下がリードするかたちで案件を獲得したい。
単身赴任の部下たちは、どうしても、夜、だらだらと仕事を続ける傾向がある。しかし、首都圏ビジネスを本格的に伸ばすためにはパワーが必要。夜は早く帰ってリフレッシュするよう促している。私はといえば、テニスで汗を流して、翌日も朝早く出社するためのからだづくりに励んでいる。
私の営業方針を表す漢字は……「均」
ソリューションを提案するときは、お客様が「したい」と考えていることと、当社の利益の均衡を保つことが大切。私はマネージャーとして、お客様と当社の開発部隊の間に立って調整する立場だ。10年間、エンジニアを務めた経験を生かして、営業の立場を技術者の目線で捉え、エンジニアたちに伝える。例えば、「その機能はすばらしいが、お客様は求めておられない。わざわざ開発リソースを使う必要はない」と意見することで、お客様と当社のウィン・ウィンの関係づくりを目指している。