富士ソフトグループで製造業向けシステム開発などを手がけるサイバネットシステムは、眼鏡型のウェアラブル端末の研究を続けている。製造業で設計・開発、製造、保守のそれぞれの工程でコンピュータによる作業支援システムを考えるうえで、「表示デバイスの進化は無視できない」(サイバネットシステムの加苅政猛・執行役員ADS第2事業部事業部長)からだ。これまでにもタブレット端末や、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の活用研究を手がけており、眼鏡型ウェアラブル端末についてはこうした取り組みの一環と位置づけている。
HMDでは、HMD特有の没入感を生かし、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)による製造対象物の可視化に重点を置いた。だが、眼鏡型ウェアラブル端末は、「これまでのHMDとは根本的に使い方が異なる」(宮地英生・ADS第2事業部事業部長補佐)とみる。まず、眼鏡型ウェアラブルは表示部分がHMDに比べて圧倒的に少ない。Google Glassがその典型だろう。
HMDがARやVRなどの比較的リッチなコンテンツに適しているのに対し、眼鏡型ウェアラブルにもそれ相応の適したコンテンツがあるとみる。眼鏡型ウェアラブルと従来のディスプレイと最も異なる点は、透過型であるかどうかだ。HMDを装着してしまうと一般的にディスプレイを通してしか前が見えない。タブレット端末も視線を画面に落とさなければ見えない。この点、眼鏡型ウェアラブルはわずかな視線移動でディスプレイを見ることができ、しかも通常はそのまま外界を目視できる。
例えばHMDのディスプレイに映し出された映像は、カメラが捉えた現実よりもコンマ数秒の遅延が発生するので、プラントなどの現場作業でHMDを装着するのは危険が伴う。また、タブレット端末は片手がふさがる。この点、眼鏡型ウェアラブルは外界を直接見る構造なので、遅延が発生せず、手もふさがらない。あるいは、保守作業でわからない点があれば、遠隔地にいる専門家と「視線──具体的には眼鏡型ウェアラブルのカメラを共有」して、一緒に作業することも可能だ。
当面の課題は、製造業のCADデータや保守マニュアルの情報を「どのように切り出して表示部の小さい透過型ディスプレイに出力するか」(加苅執行役員)だという。Google Glassが注目されるのは、眼鏡の背後にGoogleがもつ膨大な情報があり、Googleはその情報を適切に眼鏡へ出力できるとみられているからだ。サイバネットシステムは、製造業ユーザーがもつさまざまなデータを眼鏡型ウェアラブル端末の用途に適したかたちで必要な情報を切り出す技術開発に取り組むことでウェアラブル活用に弾みをつける。(安藤章司)

加苅政猛執行役員(左)と宮地英生事業部長補佐