死ぬかと思った。健康診断で胃カメラを経験するのは2回目。覚悟はしていたはずだが、胃カメラが喉に差し込まれるときの苦しさは尋常ではない。「力を抜いて!」という看護師の叱咤もむなしく、全身に力が入る。苦しさのあまり、プロレスのごとくマット(ベッド)をタップするが、許してもらえない。ほんの数分で、一日分の体力を使い果たした。胃カメラは平気という人が心底うらやましい。
胃カメラが食道から胃袋に入り切って、気持ちに少し余裕ができたときに机上を見たら、PCの画面にWindows XPロゴのスクリーンセーバーが動いていた。大病院である。インターネットにはつながっていないと思うが、不特定多数の人が目にする。そうでなくても、サポートが切れたWindows XPを利用するのはまずい。胃カメラが終わって検査室を見渡すと、ほとんどがWindows XPパソコンだった。
昨年は、Windows XPのサポート終了で、切り替え特需があった。今年は、7月15日(日本時間)にWindows Server 2003のサポートが終了する。Windows XPのときと同様の特需を期待したいところだが、「盛り上がっていない」という声が聞こえてくる。本当に、盛り上がっていないと実感しているITベンダーもあるかもしれないが、実際はそれがすべてではない。たとえ特需を感じていても、表向きは「特需で儲かっている」とは公言したくないという思惑があるからだ。
Windows XPのサポート終了のタイミングでは、セキュリティの不安を必要以上に煽ったことで、ユーザーの強い不信感を招いた。「経営改革のためのITとかいいながら、結局はそこで儲けようとするのか」と。そのため、Windows Server 2003からの移行案件を確実に獲得しているITベンダーは、いたずらにセキュリティ問題で煽るのではなく、将来を見据えた提案をしている。OSのサポート期限、ミドルウェアのサポート期限、ハードウェアのリース期限などの依存関係を排除するには、どうすべきか。こうした提案をしっかりできなければ、「盛り上がっていない」ことを実感してしまう。
いずれにせよ、Windows XPとWindows Server 2003によって、IT業界はまた一つ成長した。とはいえ、成熟するには早い。まだまだ伸び盛りである。ちなみに、今回の健康診断で私の身長が伸びて自己ベストを更新! IT業界と同じく、まだまだ伸び盛りだと信じたい。
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。