あけましておめでとうございます。
「すべてのITはAIに向かう」。これをきっかけに、近未来を初夢気分で妄想させていただきたい。AIがブームとなるなか、企業向けとなるEnterprise AIも過熱しつつある。すべてのITはAIに向かうのか、それとも、バズワード程度で終わるのか。今年は、Enterprise AIの実力が問われる一年になる。
AIでは「人間の能力を超えるのはいつか」「人間は職を奪われるのか」が語られがちだが、まだ先の話。いずれ人間の職を奪うのは間違いないが、現時点ではユーザーのオペレーションをいかにサポートするかに今年も注目したい。
ところで、ホラー映画の「リング」をご存じだろうか。呪われたビデオの映像を見た者は、一週間以内にそのビデオをダビングして他人に見せないと、死に至るというストーリーである。映画とはいえ、臨場感たっぷりの映像に恐怖したことを今でも鮮明に覚えている。こう書いただけで、今夜の夢に出てきそうだ。AIも人間の能力に近づくようになると、ホラー映画を見て真夜中にうなされるのだろうか。
そこで思ったのが、AI向けウイルス。リングのごとく、“呪われた映像”をAIが見ると、ウイルスに感染するという仕組みだ。現在のAIでも、映像分析や状況分析が人間に近い、または人間以上の機能を実現している。分析に使うデータはAIのプログラムを通る。つまり、AIのセキュリティホールを利用した“呪われた映像”が登場する可能性は十分にあるということ。しかも、その映像は、街の看板でもいい。AIを搭載したロボットが、看板を見ただけで、突然暴走するということもあるだろう。映像と同様に、音でも音声認識機能を悪用したウイルスも考えられる。いずれにせよ、これまでのウイルス対策とは、まったく違う対策が必要となりそうだ。
こうしたAIを標的としたウイルスは“リング型ウイルス”あるいは“リング”と呼ばれるようになる、と予想する。いずれは、Enterprise AI分野にも波及するに違いない──。
おとそ気分はこれくらいにして、本年も『週刊BCN』をよろしくお願いします。
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。