フリーのエンジニアだった福原智代表取締役は、日本のシステム開発のあり方に疑問を抱き、トリプルアイズの設立に参加する。目指したのは、技術者集団。それもAI(人工知能)を情報システムの本丸と捉え、技術力で日本のシステム開発を変えるという野望を抱いていた。会社設立後に待っていた現実は、理想とはかけ離れていたが、あきらめずにAIに取り組んできた。そして訪れたAIブーム。トリプルアイズに追い風が吹いている。
Company Data会社名 トリプルアイズ
所在地 東京都千代田区
資本金 3600万円
設立 2008年9月
社員数 102人
事業概要 受託開発、SES、自社サービス(オリジナルパッケージ)
URL:http://www.3-ize.jp/ 終わりのないムダなIT投資

福原 智
代表取締役 「穴を掘っては埋める公共事業みたいなことをやり続けている」。フリーのエンジニアとして現場を経験してきた福原代表取締役は、日本のシステム開発に疑問を抱いていた。
システムを開発するも、現場で使われないことがある。すると、なぜ使われないのか調査する必要が出てくる。調査には費用が必要だ。調査の結果、追加開発が必要ということになる。そのための費用を用意して……と、ムダな投資が繰り返される。終わりのないIT投資によってSIerは潤うものの、ユーザー企業はいつまでたっても幸せになれないというわけだ。
「日本のIT産業は、なぜ世界で通用しないのか。ムダな仕事をつくりだして利益を上げているからではないか。本当は改修で十分に対応できるのに、次世代システムなどといって新規開発の必要性を迫る。そんな内向きの視野では、世界で通用するサービスは提供できない」と、福原代表取締役は指摘する。
トリプルアイズを設立するにあたって福原代表取締役は、もっと自由に技術を活用したいと考えていた。技術のなかでも、とくに注目していたのがAIだ。ところが、最初はつまずくことになる。
自社パッケージで脱SESへ
創業時のトリプルアイズは、少数精鋭の技術者集団を目指していた。「技術力を生かして自由に仕事をしたいと考えていたが、現実はフリーのエンジニアよりも不自由な状況だった」と、福原代表取締役は当時を振り返る。大手SIerへのSES(System Engineering Service)などを事業の中心としていたため、結局は指示された通りにシステムを開発することが多かった。
とはいえ、SESは経営を安定させやすい。トリプルアイズは、SESを展開するなかで体力をつけ、利益をパッケージ開発にまわすなどして、新たな展開を模索し続けてきた。失敗を繰り返すも、徐々にかたちになり始めているという。「自社パッケージの芽が確実に出始めているので、今後はどのような花が咲くかを本当に楽しみにしている」と福原代表取締役。AIに関しても、自社ブランドを展開する準備が整いつつある。現在はまだSESが事業の柱となっているが、近い将来には脱SESを実現する考えだ。
AIの開発はあきらめない
トリプルアイズは、ディープラーニングのプログラムを自社開発し、さまざまなシステムにAIを適用することに取り組んでいる。AIを搭載した囲碁ソフトにも3年前から着手していて、国際大会に参加するなど、実力を養っている最中である。
「囲碁ソフトが何かと話題になっているが、当社が参加する大会は限られたコンピューティング環境での能力が求められる。膨大な資源を使う囲碁ソフトとは違うノウハウが必要だ」。それゆえ、囲碁ソフトで培ったAIのノウハウが、より汎用的に活用されることが期待される。すでに、文字認識やレコメンドシステムなどにおいて、AI活用の実績を上げており、問い合わせも増えているという。
AIに対する福原代表取締役の思い入れは強い。「AIはまさに本丸。スマートなシステムを構築しようとしたら、AIが不可欠。日本のIT産業は、海外勢に先を越されてばかりだが、AIだけは独占されてはいけない。AIは国産をつくらないと日本が危うい。なぜ、国産大手は切り込もうとしないのか。当社はAIの開発だけは絶対にやめない。日本を代表するAIをつくり、海外でも利益を出す」。
折しも時代はAIブーム。ただ、ブームの源泉は海外勢である。トリプルアイズの取り組みが、どこまで切り込むことになるのか。いずれにせよ、AIのトップランナーを目指すトリプルアイズに迷いはない。