米国を中心に、ブロックチェーンを活用した新しいサービスが銀行などの既存金融機関を駆逐するという論調は根強い。日本市場では、ブロックチェーンがどんな領域にどんなインパクトを与えることになるのだろうか。(本多和幸)

コンセンサス・ベイス
志茂 博
CEO ソフトバンクの国際募金プラットフォーム研究開発事業を技術面でサポートしてきたブロックチェーン専門企業であるコンセンサス・ベイス。同社の志茂博CEOは、本連載の第4回、第5回で登場したカレンシーポートの取締役CTOも務める。カレンシーポートのブロックチェーン関連事業を技術者として牽引するほか、コンセンサス・ベイス独自でも、大和証券グループが手がけるミャンマー連邦共和国ヤンゴン証券取引所へのブロックチェーン適用を想定した実証実験などに参画している。
志茂CEOは、ブロックチェーンがもつ可能性をどう評価しているのだろうか。意外にも、「専門のプロとしてやっているが、正直にいってまだまだわからないことが多いという。
「技術的には未熟なところがたくさんあり、それを実際のビジネスにどう生かすかという観点では課題も少なくない。技術の弱点をビジネスの設計でカバーする方法もあるし、いずれにしても、いまはいろいろな実証実験を重ねてさまざまな課題を潰していく段階にある」(志茂CEO)。
堅牢製やゼロダウンタイムも検証が必要
志茂CEOが技術的な課題の具体例としてまず挙げるのが、パブリックなブロックチェーンにおけるファイナリティの問題だ。取引が確定するタイミングを明確には決められないという課題を放置したままでは、ブロックチェーンが適用できるシステムの範囲はかなり狭まってしまう可能性がある。また、一般的にいわれている「改ざんできない」「ダウンタイムがない」などのブロックチェーンの特性に関しても、「本当にそうなのかは、実は明確にはわからない」という。「セキュリティやダウンタイムの問題にしても、常識的に考えればまず大丈夫だろうという緩い確率論のなかで動いているのがブロックチェーンの現状。ビジネスに使う時にはそれでは困ることが多々ある」と指摘する。
それでも志茂CEOは、「インターネットも最初はこんなの意味がないといわれていたが、今では誰もが使っている。ブロックチェーンもそうなる可能性はある」と感じている。最初はわけがわからない技術だと思ったというが、「わけがわからないということは、ヤバいテクノロジーに違いない」と、技術者の本能にしたがって飛びつき、深く掘り下げてきた。実ビジネスへの適用に向け、さまざまな実証実験を地道にサポートしていく。