2016年で設立20周年を迎えた特定非営利活動法人の日本情報技術取引所(JIET)。「ビジネスの創出と良い取引の成立を目指して」をスローガンに掲げ、単なる情報交換の場ではなく、システム開発の案件を取引する場として、IT産業の発展に貢献している。JIETは長らく続いていた体制を15年に一新。二代目の理事長に就任したバリューソフトウエアの酒井雅美社長のもと、新たな取り組みを開始している。なかでも大きなチャレンジとなるのが、海外展開だ。
業界健全化に取り組んだ20年
JIETの活動目的の一つは、ビジネス創出の場を提供することにある。「JIETは単なる情報交換の場ではない。仕事のやり取りをする団体。そのために、商材を紹介する場を設けるなど、ビジネス創出のきっかけとなるようなことにも取り組んでいる」と、14年に二代目の理事長に就任した酒井雅美氏は語る。なかでも、JIETはIT業界の階層構造の改善、とくに3次請け、4次請けといった多重下請け構造を回避することにより、業界健全化の実現に取り組んできた。階層が下にいくほど、多くの人件費が搾取されることになるため、どのSIerも多重下請けをよしとはしていない。ただ、上に行くきっかけがないと難しいのも事実。JIETがそのきっかけをつくる役割を担ってきたというわけだ。

また、JIETの特徴は、活動範囲が都市部に限っていないところにある。全国に支部があり、地域情報社会の発展に貢献してきている。そのため、約700社という日本最大級の会員企業数を誇る。規模が大きいことから、行政にアピールする団体としての活動にも注力している。IT業界内の他団体との交流も重視しており、7月に発足した「日本IT団体連盟」の設立に中心的な役割を果たしている。ちなみに、酒井理事長は日本IT団体連盟の理事兼副会長を務めている。
海外は台北とバンコクへ

日本情報技術取引所
酒井雅美
理事長 16年に設立20周年を迎え、酒井理事長のもとでJIETは組織を大きく変更。「これまでの20年の活動で、ある程度の成果がみられるため、今までの活動を継続しつつ新しい取り組みも進めていく」と、次を見据えている。
JIETの組織で大きく変わったのが、本部の廃止。これまで各地に本部と支部を置いていたが、本部を廃止してフットワークをよくした。「北関東のみ支部が二つあったが、ほかは本部と支部が一対一で機能が重複していて、二重行政のようなかたちになっていた。当初は、本部の下に各県の支部を置く予定だったが、結果的に主要都市で支部を置くことにとどまったため、本部が機能しない結果になっていた。また、新たな組織として、ボトムアップで理事会に提案などをする諮問委員会、支部の活動を横串する活動委員会をつくった」と、酒井理事長は新体制について語る。
そして、新体制で目を引くのが、新たな支部を設立するための「特命理事」を置いたところだ。特命理事には、沖縄支部設立担当、台北支部設立担当、バンコク支部設立担当の三人が就任。新規の支部設立を目指す。
海外支部の役割について酒井理事長は、「JIETが日本で活動してきたことを海外に展開することを目指している。例えば、台北でJIETを設立し、ビジネス創出の場を提供していく」との考えを示す。海外支部には日本のシステム開発を担うオフショア市場としての期待もあるが、海外支部の案件を日本で担うという逆方向も想定している。
「日本は現在、多くのシステム開発案件があり、人材不足の状態が続いている。ただ、現在はいいが、下請けはいずれ衰退していくとか、オーダーメイドの開発が減っていくという意見がある。実際にそうなるとは限らないが、準備はしておかなければならない。海外進出はそのためでもある」と酒井理事長は、マーケットの拡大を意識した海外進出であることを強調する。まずは、台北支部とバンコク支部を設立し、これを足がかりにアジア地域にJIETの活動を広げていく。いずれは欧米にも進出することを構想している。