みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループの三大メガバンクとデロイトトーマツグループが設立したブロックチェーン研究会の実証実験では、銀行間の振込業務へのブロックチェーン活用を模索した。(取材・文/本多和幸)
まずは、現行の決済システムの概要をおさらいする。個人や企業の間で資金の受け渡しを行う場合、送金・振込をする側の金融機関を仕向銀行といい、受け取る側の金融機関を被仕向銀行という。この仕向銀行と被仕向銀行間の資金決済の実行プロセスは、「ペイメント」「クリアリング」「セトルメント」の三つから成り、これを司るシステムが、「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」と「日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)」だ(図参照)。これらの仕組みは、国内のほぼすべての金融機関を網羅している。

ペイメントをブロックチェーンで実現
仕向銀行から送られた取引データ(振込指図)は全銀システムでリアルタイムに処理され、すぐに被仕向銀行宛に送信される。これが、ペイメントと呼ばれるプロセスだ。同時に、全銀システムでは、仕向銀行から送付される振込指図をすべて集約したうえで、その日の全取引終了後に、最終的に参加銀行それぞれが受け取る、または支払うべき金額(決済尻)を算出する。ここまでをクリアリングと呼ぶ。クリアリングにより算出された決済尻のデータは日本銀行に送られ、各銀行の日銀当座預金間で資金振替が行われ、銀行間の決済がようやく完了することになる。この最後のプロセスがセトルメントだ。ペイメントとクリアリングは全銀システム、セトルメントは日銀ネットにより行われる。
ブロックチェーン研究会の実証実験では、資金決済の起動プロセスであるペイメント部分にブロックチェーン技術を適用し、クリアリングとセトルメントは今回の対象外としている。