2000年の創業から黒字を続けるザイナス。当初はエンジニア派遣を中心にビジネスを展開しながら徐々に受託開発を増やし、現在では売り上げの半分は受託開発となっている。同社の特徴は、拡大路線に積極的なところにある。リーマン・ショックで世の中が混乱したときも、積極的にM&Aを仕掛けながら企業規模の拡大に努めてきた。「将来的な不景気については、あまり心配していない。むしろAIに脅威を感じる」と江藤稔明代表取締役社長。M&Aを推進するのは、生き残りを模索するためでもある。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 ザイナス
所在地 大分県大分市
資本金 7200万円
設立 2000年5月
従業員数 135人
事業概要 コンピュータソフトウェア開発、パッケージ販売、ITエンジニアソリューション、ウェブソリューション
URL:http://www.zynas.co.jp/
社長はアイデアマンが多い

江藤稔明
代表取締役社長
ザイナスの設立は2000年。事業の8割はエンジニア派遣で、2割が受託開発だった。ただ、受託開発といっても、一般的なそれとはちょっと違う。「当時はオフィスにPCが複数台導入されるようになり、ExcelやAccessなど、エンジニアでなくても手軽に活用できるツールが普及した。すると、一般企業のトップが『こんなことはできるのでは』というアイデアをもつようになる。企業のトップにはアイデアマンが多く、宴会でITの話になると、アイデアがどんどん出てくる」と、江藤社長は当時の受託開発について説明する。
江藤社長は顧客のアイデアをシステム化するだけでなく、顧客がパッケージシステムとして販売できるようにした。パッケージシステムを販売できるとなれば、顧客もザイナスに発注しやすい。これが当たり、ザイナスは受託開発事業を大きくするきっかけとなった。
ザイナスはシステム開発の拠点を大分においているが、一部をベトナムに出している。「日本人のほうが仕事を進めやすいが、コストの関係がある。ベトナムでのオフショア開発は、これからという部分もあるが、今のところは十分に機能している。悪いと感じるところはない」と江藤社長。ベトナムのSIerに出資したこともあり、今後はオフショア開発にも注力していく予定である。
AIでSEが不要になる
設立以来、黒字経営を続けているザイナスは、利益を企業規模拡大のために積極的に投資してきている。拡大路線を突き進む理由の一つは、SIerは企業規模が大きいほうが有利との考えからだ。
「システム開発は、仕様変更が途中で発生するなどして、納期に間に合わないことがある。仕様変更がユーザー企業側に責任があるとしても、言った言わないで揉めると、どうしてもSIerが不利になる。体力のないSIerは、そこで終わってしまう。当社はユーザー企業の気持ちになって、もめないように、ぐっとガマンするのが基本。ユーザー企業が満足できれば、次の仕事へとつながっていく。だから、ここまで続いてきた」と、江藤社長。常にトラブルが発生するわけではない。SIer側に体力があれば、1回の対応で信頼関係を崩すようなことは避けられる。関係を続けることができれば、トラブル時の反省を生かした対処をすればよい。
ザイナスは、M&Aを中心に企業規模を拡大してきた。それも、福岡や東京など、本社のある大分にこだわることなく貪欲に吸収してきている。M&Aの対象は、SIerだけではない。ファイルサーバー関連のベンダー、写真サイトの運営企業、CAD関連のベンダー、さらにはイベント会社も買収している。基本はITを軸としているものの、可能な限り広くアンテナを張っている。その理由について、江藤社長は次のように語っている。
「東京五輪の後は不景気になるといわれているが、あまり心配していない。SIerにとっての脅威は、不景気ではなく、AIにある。AIの進歩によって最初に不要になる職種は、SEだと思うからだ。その未来は容易に想像できる。AIはもうすぐ感情をもつようになる。AIを開発するAIが登場すると、その流れはさらに加速することは間違いない。AIは分析が得意なため、SEの仕事の多くを担うことができる。このことは、いずれIT業界の大きな問題となっていくだろうが、AIの開発を止めることもできない。当社が多角的にM&Aを進めているのは、AIにSEの職を奪われる前に、生き残ることができる事業を育てるという目的もある」
AIに奪われない仕事という観点から、ザイナスが今後に向けて注力していく分野の一つが教育である。AIやロボットが普及しても、人がいなくなるわけではないため、教育ビジネスはアリという判断である。
「人には欲がある。人に教えたいというのも欲の一つ。これまでの経験を何らかのかたちで伝えたいと思う人は多い。今年はそこを考えながら、今後のビジネスのあり方を追求していく」(江藤社長)。ザイナスは、インキュベーション施設を用意し、起業家教育にも取り組んできている。そうした経験も踏まえて、教育ビジネスのあり方を模索していく考えだ。