一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
略歴
久保田 裕(くぼた ゆたか)

1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
先日、山口大学知財教育普及活動の一環として、熊本県立南陵高校で著作権や情報モラルに関する授業を行ってきた。この高校は、文部科学省の「大学・研究機関等との連携など先進的な卓越した取組を行う専門高校等」として昨年度からスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)に指定されている。授業では、農業の6次産業化(生産のみならず加工・販売もあわせて行うこと)が進展するなか、農産物を生産・販売する際にSNSやPOPでの情報発信には生産者の思いを込めた表現が求められると指摘したうえで、その思いを込めた表現こそ著作権が保護するものであることを説明した。
現代社会において、工業であれ商業であれ農業であれ、携わる人たちが、これらの産業を従来通りの発想でみていては消費者に訴求することはできない。クリエイティブな発想にもとづく情報発信が不可欠なのだ。
これまでゲームを含むコンピュータソフト業界で活動してきたからかもしれないが、経済活動に取り組むうえで、クリエイティビティやホスピタリティを土台としたいわゆるソフトウェア的な発想はますます大きくなってきている。AI(人工知能)に対しても、人々の仕事を奪うものと捉えるよりも、AIで置き換わる業務はAIに任せればいい。人は新たなビジネスの可能性を広げるクリエイティブな仕事に取り組むべきだ。ただし、そのためには能力開発が必要であり、教育はますます重要になる。社員教育のあり方も変わるかもしれないし、学校教育も知的好奇心を育てるように変えていかなければならないだろう。
一方で、これまで私が取り組んできた著作権教育について、著作権が「表現」を保護するものであるため、私は、豊かな表現を育む教育こそが大事だと主張してきた。この点で、著作権教育はクリエイティブ能力を高める教育とベクトルが一致している。
著作権教育というと、やってはいけないことを列挙することに終始しがちだが、もっと根底から教えるべきである。クリエイティブ能力を伸ばす教育は、オリジナルで独創的な表現を大切にするという点において、著作権教育と表裏一体なのだ。これからも、著作権教育を通じて子どもたちのクリエイティブ能力の向上に資する活動を進めていきたい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。