ボット対策に大きく寄与
航空会社大手の日本航空(JAL)は、インバウンドの恩恵を受けて売り上げが順調に増えていたものの、大きな課題を抱えていた。それは、ボットトラフィックの増大だ。海外地区の国際線予約サイトで、航空券の購入に直結しない空席や運賃情報だけを参照するアクセスが増えていた。そこで、アカマイ・テクノロジーズ(アカマイ)のボット管理サービス「Bot Manager」を導入。ボットのトラフィックを制御し、社内で高い評価を受けた。
【今回の事例内容】
<導入企業>日本航空
国内で最初に世界に羽ばたいた航空会社。「世界で一番お客様に選ばれ、愛される航空会社」をモットーに、安全で最高のサービスを提供するフライトを追求している
<決断した人>
神取健太郎
アシスタントマネジャー
<課題>
海外地区の国際線予約サイトで、航空券の購入に直結しない空席や運賃情報だけを参照するボットトラフィックの増大に悩まされていた
<対策>
アカマイ・テクノロジーズのボット管理サービスである「Bot Manager」を導入
<効果>
アクセス全体の約86%を占めていたボットのトラフィックを制御
<今回の事例から学ぶポイント>
予約システムが利用する外部予約エンジンの課金を大幅に削減したほか、ボット対策への取り組みが社内で高評価に
莫大なトラフィックでコスト増に
2010年に厳しい状況を経験したが、V字回復によって12年に再上場を果たしたJAL。今年3月時点では、コードシェアを含むグループ路線数が、国際線571便、国内線143便という国内大手の航空会社だ。
国内を含めて56か国・地域に就航、344空港に乗り入れていることから、海外からの航空券予約が多く、海外地区の国際線予約サイト「
https://www.jal.com(jal.com)」の人気は絶大だ。神取健太郎・IT企画本部IT推進企画部旅客基幹システムグループアシスタントマネジャーは、「インバウンド効果によって、売り上げは順調に増えている」とアピールする。
堅調な売上増とともに、アクセス数も増える一方、ある課題が浮き彫りになった。サイトでは、空席情報や運賃情報を含めた航空券の予約システムを提供しているが、実際の航空券の購入に直結しない、空席や運賃情報だけを参照するアクセスが増えたのだ。神取アシスタントマネジャーは、「アクセス増と売上増が比例していないため、ボットの存在に気づいた」という。インバウンド国際線予約サイトでの空席照会や座席予約は、外部の予約エンジンサービスを利用していたため、リクエストの量に応じて料金を支払わなければならない。インバウンド需要で予約サイトを利用する航空券の売り上げは伸びているが、それ以上に購入につながらない照会トラフィックが増えて、外部へ支払う料金が大きな負担になってきたわけだ。
ボットトラフィックの増大を防ぐための対策として講じたのが、異常なアクセス数のあるソースIPアドレスをファイアウォールで遮断するというものだ。「遮断を自動化するプログラムも開発したが、対策を察知するとアクセス元を変えてボット側が進化する。“イタチごっこ”になってしまった」と、神取アシスタントマネジャーは状況を説明する。そこで、ボットのトラフィックを制御する製品・サービスの導入を検討することになった。
コストを大幅に削減
選定にあたって、さまざまなベンダーの製品・サービスを検討し、その結果、アカマイのBot Managerの採用が濃厚となった。jal.comで、高速化を目的にアカマイのCDNサービスを導入していたという実績があったことで、アカマイの製品・サービスは社内で高い評価があったのだ。「CDNサービスなどは導入のハードルが低かった。Bot Managerも同様だと判断した」(神取アシスタントマネジャー)という。海外の航空会社でのBot Managerの高い導入効果を参考に、まずはサービスの試用を開始した。
試用段階では、Bot Managerをモニタリングモードで運用。ところが、検知されたボットは全アクセス数の7.8%と予想外に低い割合だったという。そこで、アカマイではボットの挙動を確認しながら何度もチューニングをくり返して検知精度を高めていき、ボットの検知率を改善させた。神取アシスタントマネジャーは、「全体のアクセス数のうち、約86%のトラフィックがボットで、それを遮断することに成功した」と満足そうに振り返る。ボットによって発生していたリクエストがなくなった結果、外部に支払うサービス料金の約59%を削減。悩みを解決した。
コストを大幅に削減したボット対策は、社内でも高い評価を受けることになった。ただ、「成功してもイタチごっこは続いた。しかし、このような状況でもアカマイはその都度チューニングしてくれる」と神取アシスタントマネジャー。アカマイがユーザー企業の危機感をともに考えてサポートしてくれているのだ。
JALでは、20年度までの4か年中期計画のキーワードとして『挑戦、そして成長へ』を掲げており、その一環としてウェブサイトの強化にも力を入れている。バックエンドを含めたプロジェクトを進め、その一つとして日本地区向けの国際線予約でもBot Managerを導入する方向になっている。(佐相彰彦)