都市部での相互乗り入れや複々線化が進む一方で、地方では既存の鉄道路線やバス路線の見直し論議が続いている。そのたびに出てくるのが提供者側の採算の悪化と、利用者側のインフラ充実との綱引きだ。

　利用者が少ないから採算がとれず、撤退せざるを得ない。交通機関の場合、値上げをすることは難しい。ある程度地元自治体による支援を受けられる地域もあるが、それも限られた税収では長くは続かない。

　公共交通機関は、とくに鉄道において土地と機材、人件費、メンテナンス費、エネルギー費と運営にかなりのコストが必要となる。主な収入は運賃であるから、利用者が少ないと採算が取れないというわけである。少子高齢化で利用者の増加策に対する先の見通しも暗い。

　確かに昔から親しんできた駅舎がなくなるのは寂しい。町の中心となる駅がなくなると町全体が活力をなくすなどの情緒的な意見もある。

　他方、シェアリングエコノミーが進展するなか、自分が移動したい時間に移動したい人数で移動できるUberなどのサービスも出てきている。

　サービス提供者の都合で1時間に何本かしか運行しておらず、その時間に合わせて予定を組んでいたものが、Uberなどでは自分の利用したい時間に移動ができる。

　人が増え、情報の流通量が少なかった時代には、サービス提供者が優位にあり、大量輸送が効率的であった。しかし、これから人が確実に減っていく。そして情報量は格段に増えている。

　AIスピーカーなどのIoTでネットワーク上のサービス提供者とつながり、個別の利用者の都合でサービスを組み立てることが可能になってきたのだ。

　これは移動の分野に限らない。テレビはオンデマンドですでにそうなっているし、学習もeラーニングでオンデマンド化が可能になった。銀行などの手続きも多くがネットで可能である。

　まとめて大量に一度に行うことが効率的であり、コストも抑えられていた時代から、シェアにより個別への対応を行い、無駄を減らし、効用を高め、コストも抑える時代にシフトが進んでいる。マスから個別対応を可能にするソリューションの登場が今後加速化すると私は考えている。