電気やガス、水道と同様に、情報が手軽に活用できるようになる。黎明期のインターネットは、このように説明されることが多かった。平成時代を振り返ると、インターネットは人類の歴史に絶大な影響を及ぼしたと理解できるが、当初は、安定性やセキュリティへの不安から、個人向けと認識されるのが一般的。ビジネス分野では、一部の先進企業が興味を示す程度だった。特に帳票文化の日本においては、印刷機能の脆弱さから、インターネットのビジネス利用を避けがちだった。

 だが、個人向けの【Eコマース(電子商取引)】サイトが乱立するようになると、安定性やセキュリティの課題が解消されていき、帳票文化への対応も進み、企業で活用されるようになっていく。そうした中で登場したのが、【ASP(Application Service Provider)】である。サーバーなどの環境をベンダーが保有し、ユーザー企業はそれを利用するという形式。これにより、システムを保有するのではなく、サービスを利用するという時代の始まりとなった。

 とはいえ、ASPの黎明期を生き抜くのは容易ではなかった。2000年の初頭に成功していると言われていたのは、セールスフォース・ドットコムくらい。ASPの事業者は乱立したものの、サービス自体が未熟だったり、ネットワークが脆弱だったりして、多くが撤退した。

 風向きが変わり始めたのは、ASPが【as a Service】やクラウドサービスと呼ばれるようになってから。中でも2006年7月に始まるアマゾン・ドット・コムの「Amazon Web Services(AWS)」により、【オンプレミス】中心の企業システムでクラウド化が進み、【クラウドファースト】という言葉も登場する。

 業務システムのクラウド化は着実に進んできているが、平成終了時点では、米国も日本も2割程度にとどまっているとされる。約8割は、オンプレミス環境で稼働。今後もクラウド化が進むと考えられるが、オンプレミス環境もクラウドのメリットを吸収するなど、進化を続けている。令和時代には、オンプレミス環境へと戻る可能性も否定できない。

 ちなみに、インターネットの普及以降、【IT企業】と呼ばれる会社が増えた。その多くは、ITを提供するのではなく、ITを活用したサービスを提供しており、厳密にはサービス提供会社である。例えば、【シェアリングエコノミー】で代表される配車サービスの会社は、IT企業ではなく、配車サービス提供企業である。トラディショナルなIT企業である【システムインテグレーター(SIer)】【ソフトウェアベンダー】【サーバーベンダー】などとは完全に別物だが、一般的には同等に扱われがちなため、しばしば混乱を招いている。(畔上文昭)