前回解説したSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の第二期では、2019年10月から20年度末にかけて自動運転の大規模な実証実験を行う。国内外の自動車関連メーカーや研究機関など28団体が参加。東京五輪の直前の20年7月には、100台規模の自動運転車を投入し、一般市民が試乗できるイベントも東京臨海地区で開催する予定だ。(取材・文/安藤章司)
東京臨海地区の実証実験では、区域内でいつ、どの区間を走行しても自由。自動運転車であるという目印も車体に大きく掲示する必要もない。事務局側は、事前の走行計画や自動運転車がどこを走行しているのかをリアルタイムで分かる仕組みになっているが、敢えて口出しはせず、走行に関する参加団体間の調整も行わない方針。「できるだけ一般車と同じように走行させることで、実用化に当たっての問題箇所を浮き彫りにする」(葛巻清吾・内閣府のSIP自動運転プログラムディレクター、トヨタ自動車先進技術開発カンパニーフェロー)狙いがある。
内閣府
葛巻清吾
ディレクター
実証実験では、信号機のデータを直接受信したり、高速道路への合流、ETCゲートの通過などを行う。信号機は車載カメラで認識することもできるが、例えば逆光で視認しにくい状況でも、信号機から直接データを得られれば信号の見落としの危険を大幅に低減できる。高速道路の合流では本線を走行中のクルマの位置や速度のデータを、本線に合流しようと加速車線を走っている自動運転車に伝送することで、スムーズな合流の実現を目指す。
合流技術に関しては、手動運転のクルマに向けの「運転支援」機能としての応用も可能だ。高速道路の合流は「運転に慣れた人でも難しい」(同)ため、合流支援の機能によって安全性が高まる。将来的には本線走行中のクルマと合流するクルマとの間でデータをやりとりし、お互いに速度を調整して譲り合うといった「調停」技術の開発も視野に入る。
内閣府
古賀康之
企画官
内閣府の古賀康之・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転担当企画官は、「トラックやバスなどの商用車については高速道路や過疎地域など限られた条件下での自動運転の早期実用化が期待されている」と話す。例えば高速道路でトラック3台が連なって走る隊列走行では、先頭車両のみ有人で運転し、後続車は自動で追随する無人車とすることでドライバー不足を緩和。交通量が少ない過疎地域で、道路に電磁誘導の仕組みを埋め込んで、路面電車のように誘導する。二種免許を持った運転手の代わりに、万が一の非常ブレーキボタンを安全要員を乗車させるといった運用が想定されている。