日本情報技術取引所(JIET)は2019年6月に南出健治社長が三代目の理事長に就任。「会員の規模が拡大すればJIETの活動の推進力が高まる」という理事長方針の下、就任当時約800社だった会員数をまずは900社まで増やすという目標を掲げている。具体的な施策の実行部隊となるのが広報委員会だ。多くの業界団体にとって会員増は重要課題だが、JIETはビジネスエコシステムによる成長の機会が提供できるメリットを前面に押し出して、会員定着や新規会員獲得を図ろうとしている。
既存会員の口コミで新規開拓
JIETの会員は現在850社程度まで増加しており、南出体制に移行してからも順調に会員数を増やしている。会員増の取り組みの先頭に立つ広報委員会の役割を、貝瀬幸敏・広報委員長(オルカス代表取締役)は「新規会員獲得と既存会員の定着という両輪をうまく回していくための情報発信や企画をリードしている」と説明する。
広報委員会 貝瀬幸敏 委員長
貝瀬委員長が会員獲得施策において最も重要だと位置付けるのが、既存会員の“会員体験”の向上だ。「既存会員がJIETに参加していることのメリットを十分に感じられると、付き合いのあるソフトウェア開発会社などにJIETへの入会を勧めてもらえる。こうした口コミによる勧誘が会員増には一番効果的」だという。
広報委員会は、協会活動に関するプレスリリースの配信や年2回の会報誌による情報発信、非会員に向けたJIETに関する説明会の開催などを担当している。貝瀬委員長は、こうした既存の業務に加えて、JIETの機能を会員が“使い倒す”ためのヒントとなるような先行事例などを掘り起こし、広く会員間で共有していくことで、JIETの会員体験を向上させることが十分に可能だと考えている。
「各支部で月に1度開催している営業商談会は貴重な対面でのビジネスマッチングの機会だし、Cloud-JIETという独自の情報システムにより案件や人材のマッチングをほぼリアルタイムで進めることもできる。案件や人材登録の新着情報は1日2回メールでも配信される。こうしたJIETの主要機能だけでも大きなメリットを感じていただけるケースは多いと自負しているが、単に人材、案件のマッチングをするというだけでなく、会員同士がパートナーとしてコラボレーションして新しいビジネスを始めるという動きが目立ち始めている」(貝瀬委員長)
協創相手のマッチングも
背景には、脱SESや脱下請、小規模であってもプライムの案件を追い求めようとするトレンドがJIET会員の間でも加速している。貝瀬委員長も、次のように話す。
「派遣法の改正で右往左往したり、元請けの都合に振り回されるような事業では、目先の利益は得られても先を見通しづらい。JIETが会員に提供している機能は、案件や人材のマッチングの範囲を超えて、企業同士のパートナーシップを促進するようにもなってきている。広報委員会としては、JIETのプラットフォーム上でそうした動きが出てきて会員の成長につながっていることを特に既存の会員にもっと広く認知してもらうべく、積極的な情報発信を行うとともに、さまざまな企画を主導していきたい」
新たな試みである「JIET EXPO 2019」
会員が商談会やCloud-JIETを“パートナー探し”に利用することももちろん可能だが、どんな会員がどんな強みを持っているのかを会員間で周知し、パートナーリングを促進するための新たな試みとして、JIETは昨年末に「JIET EXPO」を初めて開催した。会員が自社の開発力や独自製品など得意分野をアピールするブースを構え、セミナーや懇親会も併催した。初回にもかかわらず500人を集め、「手応えは十分」(貝瀬委員長)だという。さらに、広報誌にも新たな協創相手を見つけたい会員が自社のアピールをする枠を確保するなどの試みも始める方針だ。貝瀬委員長は「会員同士がビジネスエコシステムを構築するための畑を提供していくのがこれからのJIETの重要な役割」だと強調する。