視点

サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

2020/09/11 09:00

週刊BCN 2020年09月07日vol.1840掲載

 東京都は今年3月と4月の2回、テレワーク導入に関する緊急調査を実施し、5月11日に新型コロナウイルス感染症対策本部が発表した。その結果、都内の従業員30人以上の企業において、テレワーク導入率は3月が24.0%だったが、4月には2.6倍の62.7%に上昇していることが分かった。

 テレワークを実施した社員は4月の調査で平均49.1%。全体の約半数の人がテレワークを働き方の中に取り入れて実践していたことになる。

 あらためてテレワークという言葉を見ると、遠くを表す接頭語「テレ」と、働くを表す「ワーク」を合わせてできた言葉だ。つまり事務所から遠くで働くことを指している。

 私は15年近くテレワークを続けているが、基本的に一緒に仕事をする相手の方々は事務所に在席していた。だが今は、みんながテレワークである。プロジェクトマネジメントの観点から関係者全員が離れて仕事をする上でのコミュニケーションにおいて、七つの作法をあげてみる。主に相手が見えないことによる不信感を減らすための行為である。

 一つめは依頼内容を明確にする。言ったつもりが誤解を招く。二つめは迅速なリプライ。メールやメッセージを読んだら受領確認を入れる。三つめは成果物に対して感謝を伝える。四つめは電話ではなく図表、写真、数値、テキストで。テレワークでは時間当たりの成果物で評価される。その時に重要なのは時間。相手の時間を強制的に奪う電話は良くないツールだ。五つめは議題と時間を決めたオンライン会議。顔を見ることは安心感と連帯感に有効だ。六つめは納期厳守。遅れそうになったら早めに連絡。そして、最後の七つめは対面での会話。特に新人や顔なじみのないメンバーとは初めのうちに会っておく。人は関係性の中でコミュニケーションを行うので、初期段階でどんな感じの人かを知っておくと詮索する手間が省けて効果的だ。

 これらの七つは、同じオフィス空間にいると、私たちが何となく無意識に整えているコミュケーションのベースだ。テレワーク環境では仕事をする場合に少し意図的に関係性を補う必要がある。

 ウイズコロナ、そしてアフターコロナの時代のテレワークによる働き方には欠かせないコミュニケーションの七つの作法。ぜひ、実践してみてほしい。
 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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