あけましておめでとうございます。

 読者の皆さんとともに新年を迎えられたことを、まずは素直に喜びたい。1年前と比べると、それぞれを取り巻く状況が例年とは比較にならないほど大きく変わっていることだろう。紙媒体の制作はアナログの業務が中心であるケースがまだまだ多い。デジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)について紙面上で論じておきながら、自らの業務プロセスはアナログで分断されていたわけである。新型コロナ禍は、そうした業務の在り方を顧みる大きなきっかけとなった。いや、再考せざるを得ない状況に追い込まれたというほうが正しいか。2020年3月下旬以降、週刊BCNの紙面は印刷工程を除いてフルリモートでつくっている。

 新型コロナ禍収束への道はまだまだ見えていない。悲壮感やヒステリックな言説が充満し、なかなか息苦しい世相だ。原因をはっきり特定しづらい不安の塊が押し寄せてきて、自分でも自覚しないままに大きなストレスに蝕まれてしまう人が多かったのも20年の特徴ではなかったか。

 ストレスに押しつぶされそうになるときに、決まって思い出す言葉がある。「悩むな、考えよ。」というごくシンプルな文。07年に46歳の若さで亡くなった哲学者、池田晶子さんの言葉で、著作の帯のキャッチコピーとしても使われた。言われてみれば、悩むのと考えるのは根本的に違う気がする。池田さんの真意を横においても、なかなか力のある言葉だと思う。ストレスになすがままにされ、ただネガティブな想念の中に漂っているのが悩むことだとすれば、考えるとは、状況を打開するための行動につながる冷静かつ建設的な思考とでも言えるか。

 IT業界の各社も、必死に思考して、試行錯誤しながら20年を乗り切りったことだろう。恒例の年頭所感(16~21ページに掲載)の取材では、コロナ禍による事業環境の激変を自社のDXの推進力として利用し、そのノウハウを顧客のDX支援にも生かしていくという趣旨のメッセージが目立った。業種・業界によってはいまだに強い向かい風が吹いており、懊悩の中にいる顧客企業も少なくないだろう。彼らを思考の場に連れ戻し、再生や反転攻勢のためのパートナーとして歩むことができるか。「DX需要」や「ニューノーマル需要」とITベンダーが呼ぶ新たな成長ビジネスをものにするために必要な視点だ。

 
週刊BCN 編集長 本多 和幸
本多 和幸(ほんだ かずゆき)
 1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、13年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。18年1月より現職。