視点

衛星データによる社会課題の解決

2022/04/13 09:00

週刊BCN 2022年04月11日vol.1918掲載

 データサイエンスを学ぶ際に必ず学ぶことの一つにピラミッド型の情報の概念構造がある。最下層に現象(Phenomena)があり、その上にデータ(Data)、情報(Information)、ナレッジ(Knowledge)、知恵(Wisdom)と積みあがっていく。

 現象は事実であるが、そこから採取されるデータは必ずしも事実を写し取っているとは限らない。データのとり方によっては偏ったものもある。データが偏ったままでは上位層の情報が誤り、ナレッジも誤り、知恵も誤る。

 先日、鹿児島県の宇宙ビジネスに関するセミナーで衛星データの利活用について話を聞いた。「Tellus(テルース)」は、経済産業省の「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利活用促進事業」の取り組みとして提供されている衛星データ利活用のプラットフォームである。

 宇宙産業はこれから伸びが期待される産業なので国としても推進を図っているが、まだ参入者が少ないため、宇宙ビジネスに関する情報発信や衛星データを扱うための教育コンテンツの提供、衛星データ活用のコンテストなどを開催して普及に努めている。

 これまでの地上を走り回って集めたデータとは異なり、衛星データは網羅性とリアルタイム性が格段に向上している。例えば、愛知県豊田市がイスラエルのスタートアップ企業、Utilis(ユーティリス)と2021年に行った衛星画像の解析による水道管の漏水調査がある。衛星画像から水道水の反射特性をAIで解析することで、調査範囲(漏水可能性の区域)を絞りこみ、その地域で漏水音を確認する路面音調調査を実施したところ、259カ所で漏水を発見したそうだ。

 どのようなデータを収集して、何に活用するのか。この仮説を立てるところが非常に重要である。どんな課題を解決するために、何の動きが分かればよいのか。そして、データアナリストに代表されるようにデータ解析の技術も重要だ。大量かつ多種多様なデータを扱うことになるのでAIの活用も欠かせない。

 今後も衛星データは社会課題の解決やSDGsの達成、そして地球の平和に貢献することを私は願う。決して人類同士の殺し合いの道具になってはいけない。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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