視点

日本の会議の段取りを標準化

2022/11/16 09:00

週刊BCN 2022年11月14日vol.1946掲載

 地方公共団体情報システムの標準仕様書の第1.0版が、今年8月31日にデジタル庁から公開された。20業務の統一・標準化作業は、ステップを踏みながら進んでいることになる。一般的に標準化は先進を遅らせ、後進を助けるものだ。国全体で標準化を進めることで行政プロセスの合理化、迅速化、そしてフェアなサービス提供が実現することを期待したい。

 全く異なる分野だが、あちこちで開催される会議の段取りは一向に標準化が進んでいない。国全体の産業の振興を阻害している一つの要因であると私は考えている。

 日程の候補を参加者にメールで事務局が問い合わせ、それぞれから寄せられた候補日に合わせて開催日を決定する。「調整さん」などの日程調整ツールに任せて、空いた時間をほかの作業に使ってほしいものだ。

 特に行政機関で多いのが出欠確 認を紙で送り付け、ハンコを押して郵便で返送するパターン。どうやら彼らは昭和の時代にいるらしい。メールで事前に出欠の確認をしているのに、わざわざ郵送してくるのである。私のように全国を転々としていると、会議が終ってから机の上にある出欠確認の封書を見つけることがある。

 最近では、会議の一週間前に会議資料をメールで送ってくるようになったので喜ばしい。当然、送られてきた資料やデータを確認したうえでコメントを書き入れて会議に臨む。すると、会議机の上に印刷された資料が積んである。これはデジタル系の会議においても散見され、紙の無駄、印刷の無駄、配布に要する工数の無駄だ。代わりに会議の席にネット環境と電源を用意してほしいものだ。

 また、忘れた頃に議事録確認の依頼メールが届く。議事録はその場で要点を書き進めて、承認は会議中に終わらせてほしい。

 ペーパーレスの会議は慣れである。メモしたことを後で見返すのならば、最初からデジタル化しておくほうが便利だ。紙に書いたメモの多くは二度と見返されることなく、そのうちごみ箱へ投げ込まれることになる。

 国を挙げて、会議の段取りを標準化しよう。実りのある会議を行い、会議の結果を次のアクションにつなげよう。会議の仕方というスキル習得を小中学校から義務化できないものか。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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