視点

AIがビジネスツールになるとき

2023/03/29 09:00

週刊BCN 2023年03月27日vol.1962掲載

 ここ半年のAIの進化と民主化は、とてつもないスピードで進行している。

 人間の創造物を上回るものはできないと考えられていたが、この半年でその境界線を越えてくるところまできたかと思える。この開放されたAIを世界中のエンジニアではない人たちまでが、使い方を試行錯誤した半年であった。その結果、一気に仕事の仕方を変える効果的な使い方が生まれている。

 当社ではコミュニケーションツールとして「Slack」を使っているが、外部のアプリと連携しさまざまな機能が拡張されている。社内のドキュメントはGoogleのサービスで管理しているが、Slackのスレッドでほしいドキュンメントはどこかとたずねれば、資料のある場所のリンクを返してくれるし、出退勤や経費精算が終わっていない社員には期限前にちゃんと「BOTエージェント」が指摘してくれる。そんな機能はここ半年で数多く提供されてきたが、最近、搭載された機能は驚くほど私の仕事時間を短縮してくれる。

 それは話題の「ChatGPT」と、AIツール「Midjoueney」が連携してプレゼン用の挿絵を自動生成してくれる機能だ。まずほしい挿絵について詳しい説明文を求めると、ChatGPTが説明文を返してくれる。それを英語に変換してくれとリクエストすると、英語での説明文が完成する。こんどは絵を描いてくれるMidjourneyと連携しているBOTに、この説明文の絵を描いてと指令を出すと、いい具合の挿絵が生成される。ここまでほんの数分である。これを繰り返せば、多くのバリエーションを作り出すことが可能である。これによって私のプレゼン資料の質は大幅に向上し、時間短縮を図ることができるようになった。

 ユーザーは対話型で指示を出せばいいだけなので、「Discord」を立ち上げる必要もない。対話するようにほしいものを伝えていくだけだ。そして極めつけが、この機能をSlackに搭載したのが当社の人事部の社員で、彼女はプログラミングができないという事実である。つまりAIをユーティリティとして使うことが民主化したといっていいだろう。

 毎日のように新しく有効利用する方法が世界中で試行錯誤され共有されている。近い将来、ほしいものをリクエストすると、なんでも目の前に実現する未来がやってきそうだ。物事の価値はさらに変わりそうである。

 
アジアビジネス探索者 増田辰弘
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
 1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。
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