視点

日本のIT活用は変わるのか

2023/10/04 09:00

週刊BCN 2023年10月02日vol.1986掲載

 週刊BCN編集部には、多くのIT企業からプレスリリースが届く。新しい製品やサービスに加え、最近は生成AIに関する内容が目立っている。説明会や記者会見、個別の取材などでも話題に上がらないことのほうが少ない。注目度の高さをひしひしと感じている。

 IT企業を取材していると、特に生成AIに関する期待感が高まっている。大手を中心に開発を加速させており、サーバーなどの設備投資を進める動きが出ている。一部の企業は既に活用に取り組んでいるが、あるIT企業のトップは「各企業は、これから半年から1年ぐらい、どうやって活用するか、あるいは活用するためには何が必要かを模索するだろう」と分析。生成AI絡みの需要が本格的に増すのはこれからとし、新たなビジネスチャンスの獲得に向けて準備を進めている。

 日本はこれまで、諸外国に比べてIT活用が遅れていると指摘されてきた。例えば、スイスの国際経営開発研究所が毎年発表している2022年の世界デジタル競争力ランキングで、日本は63カ国・地域のうち過去最低の29位だった。日本との比較でよく示される欧米諸国だけでなく、アジア勢では韓国や中国などが日本より上位となった。

 生成AIに関しては、米国や中国などが利活用に積極的で、市場規模は右肩上がりで大きくなるとみられている。現状、IT活用の面で日本はまだ世界の上位にいるとはいえないが、生成AIについては「急速にキャッチアップしている」との声がIT業界内にある。これまでと違う傾向になっているのは、AIに対して各企業が望んでいた業務効率や生産性の向上、労働力の補完といった目的が、いよいよ実現できるとの見方が広がっているからなのかもしれない。

 総務大臣の諮問機関である情報通信審議会は23年6月、「2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方」の最終答申で「AIと人間、AIと環境、AIとAIなどの相互連携によって、フィジカル空間における生活、経済活動をサポートし、より豊かな生活を実現する」との未来を描いた。今後、生成AIがより普及した場合、われわれの生活やビジネスの構造は大きく変わり、編集部に寄せられる情報や、取材の進め方にも変化が出る可能性がある。各企業と同じように、しっかりと動向をキャッチアップせねばと気を引き締めている。

 
週刊BCN 編集長 齋藤 秀平
齋藤 秀平(さいとう しゅうへい)
 1984年4月生まれ。山梨県甲州市出身。2007年3月に三重大学生物資源学部共生環境学科を卒業。同年4月に伊勢新聞社(津市)に入社し、行政や警察、司法などの取材を担当。16年4月にBCNに入社。リテール業界向け媒体の記者を経て、17年1月から週刊BCN編集部に。上海支局長を務め、22年1月から現職。旧姓は廣瀬。
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