東大阪市に本社を置くディエスジャパンは、DXやサステナビリティーなどのさまざま観点を入り口として顧客を支援している。北條陽子社長は「複数の接点から顧客に関わりながら、次の提案につなげている」と語り、オフィス内のあらゆる課題の解決を目指している。
(取材・文/大畑直悠)
「オフィスの真ん中」で顧客を支援
――事業の紹介を。
当社は西日本を中心に事業を展開し、東日本はグループ会社である東京ディエスジャパンが担当している。顔が見える営業を重視しており、各都道府県に一つは支店がある。主力事業はリユーストナー事業やオフィスサプライ事業だが、昨今は成長事業としてIT製品を提供するソリューション事業を伸ばしている。プリンターの修理やPCのデータ消去といったサービス事業も展開しており、「いつもオフィスの真ん中に」をキャッチフレーズとして、顧客がオフィスで抱える課題を全般的に解決することを目指している。
顧客層は大企業を中心に、中堅・中小企業まで幅広い。プリンター周りの支援から始まり、そこでできた顧客との関係性から、ITソリューションの提案につながるケースが多い。プリンターが故障した際のサポートのために対面による営業体制を築いてきたことで、ITに関してもシステムトラブルなどに迅速に対応できる点が強みだ。物販だけではどうしても顧客との関係性が限定的になってしまうため、顧客に対してもう1歩、2歩踏み込んだ関係を築くために、IT周りで課題を抱える顧客へのソリューション提案を強化している。
――好調なIT製品は何か。
電子帳簿保存法の改正を機にペーパーレス化に取り組む企業の増加や、「Windows 10」のサポート終了もあり、PC販売は好調だ。PCの入れ替えを機にテレワークに取り組めていない企業に対して、業務の標準化や働く場所を選ばない環境の構築、セキュリティー強化まで提案を広げている。
IT製品に関しては「売ったら終わり」ではなく、例えば、テレワークであれば導入と同時にオフィスのレイアウトの見直しや、ミーティングスペースの確保といった連動する提案も推進し、アナログ面とデジタル面の両面でオフィスの課題を解決できる点を訴求している。
サステナビリティーをDXの入り口に
――力を入れているIT製品は。
バックキャストテクノロジー総合研究所との共同開発で、会計データから企業のCO2排出量を可視化するクラウドサービス「ファストカーボン」をラインアップしている。脱炭素に関しては大企業からの要望がサプライチェーンに対しても強くなっており、中堅・中小企業でも取り組む必要が生まれている。一方で、「どこから手を付けていいか分からない」「データの収集に手間がかかる」といった要因で着手できていない企業もある。あらゆる企業が保有する会計データでは、例えば通勤や出張の経費から社員の移動距離といった活動量が分かり、特別な業務を必要とせずCO2排出量を把握し、改善すべき点を明確にできる。さまざまな企業がサステナビリティーに取り組む一歩目を踏み出しやすい製品だ。
北條陽子 代表取締役社長
排出量の可視化の次のステップには当然、排出量の削減がある。省エネの推進といった解決策もあるが、テレワークを導入して通勤によるCO2排出量を削減するなど、企業全体の業務プロセスの最適化やDXによる生産性の向上で無駄な排出量を下げることも有効だ。DX推進室がない企業に対して、当社が運用の改善やサポートなども含めて提案し、トータルで脱炭素につながるようなサポートをしている。
その意味で、サステナビリティーの取り組みがDXを提案する入り口になり、新規顧客を獲得する呼び水になっている。企業がDXに挑もうとしても、具体的にどのような費用対効果あるのかイメージできずに思うように進めないこともあるが、CO2の削減という明確な指標があればDXに取り組むマインドを醸成できる。サステナビリティーとDXは切っても切れない関係だと考えている。
認知度の向上に注力
――全国での販売状況は。
創業の地である大阪が一番売り上げており、次が東京だ。名古屋や福岡、金沢、東北地方などではもっと伸ばしていきたい。対面での営業に重点を置いているという意味では、地方にいくほど顧客が地理的にまばらになる難しさがある。一方でコロナ禍以降でも地方の顧客には顔を見せることで安心してもらえるという傾向が顕著で、顧客を直接訪ねる営業を推進している。
――今後の組織マネジメントの観点での注力点は。
当社のビジネスチャンスはリユーストナー、DX、サステナビリティーなどさまざまある。顧客の提案先も情報システム部門や総務部、管理部などまちまちだ。どこから顧客に関わり始めたとしても次の提案につなげるために、当社内の部門を越えた連携を推進し、顧客に対して複数の接点から支援する体制を築くことが、さらなる成長を後押しするだろう。
Company Information
1985年に西日本パープルとして設立。リユーストナーやOA機器の販売のほか、ITソリューションの提供に力を入れている。グループ会社の東京ディエスジャパンと合わせて全国に約6万4000社の顧客を持つ。