大阪市と東京・千代田区に本社を置くシナジーマーケティングは自社開発のCRM製品の提供を中心に、伴走支援や人材育成サービスなどで顧客のデジタルマーケティングをサポートしている。奥平博史社長兼CEOは「デジタルマーケティングのハードルを下げる」と話し、中小企業を中心に導入社数の拡大を目指すとともに、CRMを活用した地方創生にも取り組んでいる。
(取材・文/大畑直悠)
伴走型支援に強み
――事業の紹介を。
2005年に自社開発したCRM「Synergy!」をメインプロダクトとして販売し、東京、大阪を中心に事業を展開している。デジタルマーケティングはツールだけ導入してもすぐに成果が出るわけではなく、ノウハウやリテラシーも必要になるため、伴走型の支援や教育サービスも用意し、システムと人的支援の両軸で事業を展開している。
Synergy!と、米Salesforce(セールスフォース)製品を連携してメールの送信などができるマーケティングツール「Synergy!LEAD」の導入数は5000社を超えており、主に中小企業に利用されている。顧客の業種・業態は幅広く、直近では地銀など金融基幹機関向けのビジネスが伸びている。
――自社の優位性は。
国内でCRMを20年間にわたって手がけている知見に基づく伴走支援が好評だ。顧客の自走を支援する人材育成サービスも準備しており、どこからマーケティングの変革を学び始めればいいか分からないという場合でも、顧客に合わせてカスタマイズしたメニューを提供している。顧客が自分たちで適切に戦略を立案・実施して評価・改善にまで至る、一連のプロセスを回せるようにサポートしている。
CRMの新しい切り口を探る
――ビジネスの近況は。
好調で、年々成長できているが、市場の成長率を見ると満足はしていない。あらゆる企業がデジタル技術を活用したマーケティングの必要性を感じるようになり、顧客からの要求が細分化されてきた。製品の面でも伴走支援の面でも、より業界ごとの特性に合わせた支援が必要になる。また、顧客が求めるサービスを理解し、新たな切り口でのアプローチを進めることも重要だ。
奥平博史
代表取締役社長兼CEO
――具体的にはどのようなことに取り組んでいるか。
CRMのノウハウを生かした地域支援の取り組みを進めており、地域の関係人口の増加を支援する「re:connect」を展開している。1回限りの観光ではなく、地域のファンになってもらうためにCRMを役立てている。自治体とも協業しており、和歌山市などで転出した若者に対して、定期的に地元の情報を発信したり、地元企業からの協賛を得て「ふるさと便」というかたちで地元の商品を届けたりしている。現在では地元企業とつながる「ハブ」としての役割を担い、就業のきっかけづくりに向けた取り組みも始めている。
生成AIによって顧客理解を深められる仕組みの構築も進めている。自社のデータや口コミなどに公開された顧客データから作成した仮想的なペルソナと対話できる「DAYS GRAPHY」をリリースした。対話を通して顧客理解を深め、商品企画などの参考にできるようになっている。
DAYS GRAPHYには外部アプリケーションとの連携機能も実装し、ユースケースの拡大に努めている。兵庫県三田市教育委員会と大阪教育大学は小・中学生向けのAI対話アプリ「MIRAIノート」とAPI連携させ、教師などの情報をインプットしたキャラクターを作成。児童・生徒が生成AIとの対話を通して、気軽に相談できるようにする実証実験を1月に実施した。
パートナープログラムを拡充
――Synergy!のパートナー戦略は。
アクティブに当社の製品を販売しているのは50社ほどだ。製品の販売やプロフェッショナルサービスを提供してもらっている。24年8月にはパートナープログラムを拡充し、営業代行パートナーのカテゴリーを新設した。顧客の紹介後の窓口手続きなどが不要で、より気軽にパートナーになってもらえるようにした。今後もパートナーの数を増やし、全国をカバーした販売体制を築きたい。
――今後の目標は。
当社の製品やサービスを使えば誰もがデジタルマーケティングに取り組め、成果を出せるようにしたい。デジタルマーケティングには複雑な業務がある。ノウハウの提供だけではなく、製品面でも手間を徹底的に省けるようにアップデートしていきたい。直近でも生成AIで記事やSNSの投稿文などの複数のアウトプットを生成できる「Writing Assistant」を発表した。今後も、もっとデジタルマーケティングの国内人材が増えるような製品・サービスの展開を目指す。
Company Information
2000年にインデックスデジタルとして創業。CRM製品やコンサルティングサービス、人材育成サービスなどを提供する。従業員数は265人(2025年1月1日現在)。