奈良市に本社を置くキステムは、自社開発製品の展開や地域密着型ビジネスの推進、ITインフラ構築力の強化を成長の柱に据えた事業を進めている。井門一美社長は「“とがった”自社製品の開発を推進する」と語り、地域で培ったノウハウの製品化に力を入れている。
(取材・文/大畑直悠)
地方の課題はIT人材の確保
――事業の紹介を。
滋賀や奈良、岡山、大阪にIT企業など8社を展開するGATE-GROUPの1社として事業を進めてており、私はグループを指揮する役割を担っている。キステムでは地域に根を張り、地元企業や公共機関を支援することを目的に、自社製品の開発や情報処理システムの販売、ネットワーク構築や通信工事などを手掛けている。グループの中では、通信事業者、大手ベンダー、大企業からの受託開発や、自社所有のデータセンターを活用したホスティングなどのサービスを提供する大都市向けビジネスを提供する企業もある。
ニッチな業界で強みを発揮
――今後の成長戦略は。
地域のビジネスで得た知見を結集して開発した自社製品を全国に展開しており、ニッチな業界の中で強みを発揮している。今後も、とがった製品の開発・販売に力を入れる。
井門一美 代表取締役社長
当社は、国内の光学機器メーカーの精密部品の製造に利用される光学部品加工システム「OPT-1」を提供している。ほかにもグループ会社が、大阪市役所をはじめとした多くの公共機関で利用される、障害者にも配慮したコンテンツ配信ができるCMS(コンテンツ管理システム)製品「UDFace」や、スポーツ団体向けでは国内トップシェアの業務支援システム「NFメンバーシップ・バックオフィス」を提供している。
従来の受託開発ビジネスには危機感を覚えておリ、いずれ減少していくと考えている。今後は、GIGAスクールで小学生の頃からプログラミングを学んだ人材が社会で活躍し始める。また、AIがシステムを自律的につくれるようになるかもしれない。こうした中、ソフトウェア企業が生き残るには、ITに関する専門性だけではなく、数学といったほかの領域や特殊な業界に対する知見を掛け合わせた製品を開発する力が求められる。
また、情報インフラの構築事業は今後、重要性が増すとみている。ソフトウェアの後ろで動く通信の領域は必ず人の手が必要で、AIでも完全に自動化できない。ネットワークの設計や構築に加え、通信の工事を提供できるグループ企業もあり、この領域は今後も強化する。
地域に密着した事業を展開
――地方のITベンダーが果たすべき役割は何か。
今以上に地域に密着した事業の展開も今後の成長戦略の一つだ。IT人材が増えても、都市部へ流出してしまう課題がある。大手ベンダーが地方に支店を出し、大きな案件を獲得できても地域に根ざしたITサポートやSI事業には限界があり、地場のITベンダーの役割は大きい。
顧客のDXの取り組みは、どこから手をつければいいか分からないなど、まだまだ試行錯誤の段階。ITコンサルタント的な役割も担いつつ、顧客と二人三脚となった支援が求められている。ITを使い変革に向けた戦略を立てる手伝いなど、単なる販売会社にはならないような価値提供を追求している。
――今後の意気込みを。
この業界では絶えず技術革新の波が押し寄せる。将来を見据えながら乗り越えていかなくてはならない。当社でもAIの自社製品への取り込みなど新しい技術への対応や、グループ内に蓄積したノウハウを活用する体制の構築を検討している。ただ、時代が変化し、顧客からのニーズが変化しても「いつの時代であっても、世の中から必要とされる企業であり続けよう」という当社の社是は変わらない。顧客に「ここの開発が難しい」と言われたときに、頼りにされる企業であり続けたい。
Company Information
1982年に創業。2012年にIT企業など8社で構成されるGATE-GROUPの一員となる。自社開発システムの販売、情報インフラ構築などの事業を展開する。従業員数は約60人。グループ全体では約640人。