仙台に中核オフィスを構えるAiソリューションズは、宮城県を事業基盤としながら、2025年5月に本店を東京へ移転した。大手SIerなどと連携して事業拡大を目指す同社の永倉仁・常務執行役員は「大手企業では手が届かない中小企業向けにビジネスを支援する」と語り、全国の人材の力を結集しながら、地場の中小企業に寄り添った支援を展開する姿勢を示した。
(取材・文/大向琴音)
仙台から東京へ本店を移転
――どのような事業を展開しているか。
これまでさまざまなビジネスを展開してきたが、現在は企業の業務で使われる各種システムの提案や開発、保守を請け負っている。主に大手のSIerと組んで請負契約による開発を行っており、私の出身企業である、NTTデータ東北の営業支援受託会社でもある。客先に常駐してシステム運用を行う業務が中心ではあるが、当社が顧客接点を持つ地場の中小企業に向けて、NTTデータ東北などの人材の支援を受けながらIT導入を行うケースも出てきている。
――ビジネスの近況はどうか。
地場に根差した会社として、大手企業では手が届かない中小企業向けにビジネスを支援している。人手不足を背景に、中小企業においてもIT導入意欲は旺盛だが、大手ベンダーのERP製品などは費用面で導入できない。だからこそ、当社のような中小のITベンダーが企業に寄り添うビジネスを目指さなければいけない。地元でつながりのある経営者を通じて紹介された企業にシステム導入の提案を行う活動もしている。
――25年5月に本店を東京へ移転した。どんな目的があるか。
東京に拠点をつくった理由の一つが、採用活動だ。20代、30代といった若手の人材を求めているが、採用が難しいという課題に直面している。仙台で中途採用をしようと思っても、狭い商圏であり、既に知っているメンバーであることが多いため、外から人を連れてこないことには人員は増えない。その上、外資系のコンサルティング企業などが仙台に事業所を出しており、そちらに人が流れている現状もある。東京に拠点を設けることで、より幅広く採用活動を展開する。まだ開設して間もないが、人材系の会社とも話をしながら、採用に向けて動き出しているところだ。
また、東京には大小問わずさまざまなビジネスのチャンスが転がっているので、当社の事業に適した案件には取り組んでいきたい。
人に依存しない仕組みづくりが大切
――顧客はどんな課題を抱えているか。
ここ1、2年ほどで、経営者のDXに対する意識は非常に強くなってきていると感じる。10年、20年前から情報システムを活用している会社もあるが、当時のまま使い続けた結果、時流に合わないかたちになっていることもある。加えて、システムを熟知している社員が辞めてしまったことで業務に大きな支障が出るなどの話も聞く。このようなこともあり、経営者自身も人に依存しない仕組みづくりをしたいという思いが強くなってきている。
永倉 仁 常務執行役員
また、やはりクラウドにシフトできていない現状がある。中小企業では、今でもローカルのPC1台で業務を回していたり、個別最適なシステムを都度導入したことで、システム同士が連携できないといった状況に陥っているケースが少なくない。
――課題解決のための具体的な方策はあるか。
中小企業が会社全体で使う基幹システムは、「奉行シリーズ」などのような実績のあるSaaS型製品を使っていただき、足りない部分は「kintone」のようなノーコードツールで隙間を埋めていく。このようなことに顧客が取り組めるよう、流れをつくるのがわれわれの役割だ。昔のようにベンダーと顧客が受発注の関係では物事はいい方向に進んでいかないので、顧客のパートナーとして認められることが重要だ。そうすることで、伸びていく企業も出てくるのではないか。
客先常駐からアウトソースへシフト
――今後の戦略を。
売り上げ規模10億円を目指したい。ただし、自社で大規模な製品をつくり、運用する体力はまだ備えていない。小さな自社サービスをつくって細かく売っていくのではなく、大手ベンダーと一緒にビジネスを拡大していくほうが適している段階だと考えている。
例えば、現在大手ベンダーのセキュリティールームに社員を派遣して運用保守をしているが、セキュリティールームを当社のオフィス内に設けてリモートで運用を担うことを視野に入れており、ベンダー側としては空いたスペースを有効に活用できるメリットがある。このように、いわゆる客先常駐からアウトソースへとサービスを高度化していくことを考えている。ほかのベンダーの社員にもプロジェクトによっては当社のオフィスを使ってもらうなど、新たな連携にも柔軟に取り組んでいきたい。
Company Information
2013年に宮城県石巻市で設立。14年には仙台市に仙台オフィスを開設した。24年に社名をイメージア・ソリューションからAiソリューションズへと改め、25年に本店を東京へ移転。企業の基幹システムの提案や開発、保守を展開している。