HR市場が成熟し、サービスの差別化が難しくなる中、販売パートナーには業界全体を理解した上での提案力が求められている。SmartHRは、HR業界の知識を深めるサポートを通じて、パートナーの事業成長を後押しする。2030年に向けた経営戦略の中でもパートナービジネスを重要な柱として位置づけており、新たなパートナープログラムの展開も予定している。(大向琴音)
「アンバサダー制度」で再販パートナーを支援
人事労務クラウド「SmartHR」は、大企業から中小企業まで導入が進んでいる。人事労務にとどまらず、タレントマネジメントや情シス分野などに関する機能も提供しており、プロダクト領域の拡充を図っている。
同社は、パートナーの種類として、金融機関のパートナーなどビジネスマッチングによって「SmartHR」を紹介する「取次パートナー」のほか、ディストリビューターやOA機器メーカーなど販売を担う「再販パートナー」、SmartHRを導入した顧客に対して設定代行や導入・活用支援、BPOを行う「活用支援パートナー」、SmartHRと連携するSaaSやアプリケーションの開発を行う「SmartHR Plusパートナー」を定めている。
パートナーに対しては、勉強会の実施や同行訪問などの支援を展開する。特に再販パートナーに対しては、「アンバサダー制度」を用意。アンバサダーとして認定を受けるには勉強会を受講する必要がある。勉強会では、製品知識だけでなく、HR業界全体の知識提供に重点を置いているため、顧客の課題解決に向け、SmartHRにとどまらない提案ができるようになり、多角的な営業スキルを身につけられる。加えて、認定取得には、提案能力をはじめとしたアウトプットも重視するという。
市場には、SmartHRだけでなくほかのベンダーのHRサービスも多く存在するため、販売店は、製品ごとの違いが分かりにくく、結果、どの製品を売るべきか悩むケースが少なくない。加えて、SmartHRのように比較的新しいサービスの場合、販売に慎重になることもある。
これら課題に対して、アンバサダー制度を活用し、HR業界全体への理解を促して顧客に最適な提案ができるようにすることで、「何を案内すればいいかわからない」「質問に答えられないから提案できない」といった不安の解消につなげていく。こうした支援で競合との差別化を図る考えだ。
阿部紘大 事業部長
新たなパートナープログラムを展開
同社では「共に発展し、誰もがその人らしく働ける社会を目指すパートナープログラム」を掲げ、26年から新たに「SmartHR Torch」の名称でパートナープログラムの展開を予定する。現在は、問い合わせ窓口としてサイトを公開している状況で、今後さまざまな面で具体化や拡充を図る方針。パートナービジネス事業本部の阿部紘大・事業部長は、「後発製品であり、後発のプロダクトだからこそ、SmartHRのエゴによるプログラムでなく、きちんとパートナーの事業にヒットできるようなプログラムにしたい。その辺りの立ち位置は気を付けたい」と強調する。
30年に向けてさらなる強化へ
取次パートナーとの取り組みが19年頃から、再販パートナーについては21年から開始した。積極的な投資を続けたこともあり、ここ数年の間で同社内のパートナービジネスに関わる組織も拡大している。
現在同社は、「人的資本経営プラットフォーム」を目指し、30年の売り上げ目標として1000億を掲げており、経営戦略の中で今後のパートナービジネスに関して言及されるようになったという。阿部事業部長は「会社として、パートナービジネスにより注力していくという認識になっている状態。会社の姿勢自体がかなり変わってきていると感じる」と述べる。