米Dell Technologies(デル・テクノロジーズ)は、PCからサーバー、ストレージまで幅広い製品ポートフォリオを持ち、事業展開においてパートナーとの協業をより重視している。日本法人では、販売を担うチャネルパートナーと、デルの製品を軸にサービスを構築するSIerなどのアライアンスパートナーを支援する二つのチームを統合した。あらゆるITインフラでAI活用がかぎとなる中、双方のパートナーのコラボレーションを促進するなど、相乗効果を高めシェアの拡大を狙う。(堀 茜)
パートナーに「オールイン」
同社の販売パートナーは、販売額や取得している資格などに応じて4段階の認定を受けている。上位パートナーほど段階的にインセンティブやサポートが強化される。一方、アライアンスパートナーは、デルの製品を導入し、それをベースにソフトウェアなどを組み合わせた独自ソリューションをエンドユーザー向けに展開するSIerなどが該当する。
これまでは社内で二つのチームがそれぞれのパートナーを支援してきたが、8月にチームを統合した。専務執行役員の日下幸徳・パートナー事業統括本部長は「すべてのパートナーエコシステムを一気通貫で対応することで、当社のリソースを効果的にパートナーに届けられる」と語る。同じ担当者が対応し、双方のパートナーを橋渡してコラボレーションを促進することも狙っているという。日下専務は「当社がパートナーにオールインするという姿勢を社内の体制からもお伝えしていきたい」とする。
パートナー販売は、デルの事業の中核を占めている。グローバル全体の売り上げの半分はパートナー経由で、アジア太平洋地域においては、新規や休眠企業が製品を導入したうち、75%がパートナー販売だという。2024年度の実績では、同社のパートナー事業の伸び率は前年比18%増だった。日下専務は「日本のパートナービジネスの割合は、グローバルでみても相当高く、パートナービジネスは力強さを維持している」と手応えを語る。国内では継続的な二桁成長と前年越えを目標とし、パートナーへの投資や支援を拡大していく考えだ。
日下幸徳・専務執行役員
AIの可能性を共に探究
さらなる成長のかぎとなるのが、AIだ。PC販売では、同社製品の在庫モデルをディストリビューター経由で購入、販売したパートナーにクーポンを発行し、次回の製品購入時に割り引きが受けられる中堅パートナー向けの支援策「RISE」や、他社PCを販売していたリセラーが、リプレースでデル製品を販売した場合、これまでよりも高いインセンティブを支払うプログラムを実施している。PCのリプレースにおいては、AI PCの引き合いが強くなっているという。AI PCは価格の高さが導入のネックになる側面があったが、「『Pro Essentialシリーズ』はAI PCの中でも価格競争力のあるモデルとして注目が高い」(日下専務)と、パートナーによる拡販に期待を寄せる。
サーバーやストレージなどのISG領域では、サーバー全体の伸びをGPU搭載製品がけん引しており、現状はサービスプロバイダーなどが導入するケースが多いとする。今後需要が伸びるとみられるのが、エンタープライズでのAI活用を前提としたITインフラの構築用途だ。日下専務は「エンドユーザーの課題や悩みを一緒に考え、解決していくことが当社とパートナーに求められる」と分析する。
同社はAI向けに多彩な製品をリリースしているが、日下専務は「AIはマーケットが非常に大きく、当社だけですべてをまかなうのは難しい」との見方を示し、「パートナーと協力しながら、エンドユーザーに本当に貢献できるAIサービスに仕立てていくことが必要になる」と指摘する。単純に製品を再販するだけでなく、そこにどんな価値を付加すべきかという点について、パートナーから相談を受けたり、アドバイスを求められることも多いという。どの市場でどういうビジネスをつくっていくのか、深掘りして議論を深めている段階だといい、「当社の考えに賛同いただけるパートナーと重点的に取り組んでいる。AIのビジネス構築に向けて協業を強化したい」と展望する。
武器になる製品を提供
パートナービジネスの拡大に向けて、日下専務は「当社が、パートナーの武器になるようなソリューションをいかに提供できるかが重要になる」と強調する。その一つとして挙げたのが、9月に提供を開始したITの簡素化を支援する「Dell Automation Platform」だ。AI、プライベートクラウド、エッジ環境などでソリューションの展開、管理、オーケストレーションを一元化し、直感的な体験を実現するほか、ユーザーのニーズに合わせてパートナーによるカスタマイズもできる。日下専務は「パートナーが売りやすいソリューションになり得るので、全面的に啓発してきたい」と話す。
パートナー戦略の方向性として、日下専務は「世界最高のパートナーエコシステムをつくりたい」と展望する。販売額の大きいパートナーと地場に密着したパートナーの双方を重視しており、さまざまなベンダーと取引しているパートナーが、デルの支援が一番だと言ってもらえることを目指していきたいという。日下専務は「パートナーと一緒に日本のITを高度化し、お客様の成長にどれだけ貢献できるかにフォーカスしていきたい」と前を向く。