2月1日付でBox Japanの社長に就任した佐藤範之氏は2月26日、同社の事業戦略説明会に登壇し、本年度(FY2026)は企業内に蓄積するデータを活用するインテリジェントコンテンツ管理プラットフォームの実現に向け、全ての人がAI機能を使えるようになる「AIの民主化」を推進する方針を示した。また、アプリケーションを開発できる機能などを搭載した最上位プランの活用により、ワークフローの自動化の実現で顧客を支援していく。販売面では、金融や公共といった注力業界に加え、首都圏以外の地方での拡販を目指す。
(堀 茜)
佐藤範之社長(右)と古市克典会長
佐藤社長はまず、前年度の業績を紹介した。国内の顧客は2万社を超え、アイ・ティ・アールによる調査では、国内のコンテンツ・コラボレーション市場でのシェアは38.2%となり、1位をキープした。グローバルにおける日本の売り上げ比率は年々高まっており、24%を超えた。導入企業の規模も多様化しており、エンタープライズに加え、社員500人以下の企業でも大きく伸長。新規受注高における構成比率は、中堅・中小企業が3割超、関東以外のエリアでの売上は約4割だった。好調の背景については「データ容量無制限という点が評価されたことに加え、大手のお客様が導入いただくことで、サプライチェーン上の中小のお客様にもプロモーション効果があった」と分析した。
本年度の方針について、製品面では「Box AI」などのAI関連機能が重点項目になるとした。同社は24年にAI機能を大幅に拡充。国内では25年1月から全てのAI機能が使える新たな最上位プランとして「Enterprise Advanced」の提供を開始した。最上位プランの機能については、Box AIをカスタマイズして各用途に最適なAIエージェントを作成できる「Box AI Studio」や、ノーコードで業務に適したアプリケーションを作成できるツール「Box Apps」を紹介。「容量無制限で格納した多くの非構造化データをAIによって構造化することでワークフローの自動化につなげることができる」(佐藤社長)と解説した。
AIによるワークフロー自動化を実現するための重要な要素として、ドキュメントから特定項目のデータを自動抽出する機能を紹介。請求書をBoxにアップロードすると、請求金額に応じて申請先を変更した承認ワークフローが実行される、といった仕組みが構築できる。国内では従前の最上位プラン「Enterprise Plus」の利用顧客が現在の売り上げの半分以上を占めるが、本年度はEnterprise Plus顧客のうち2割強をEnterprise Advancedにアップグレードしてもらうことを目標に掲げるという。同社が目指すAIの民主化に向けて、2月には全てのプランでドキュメントの要約など一部のAI機能が使えるよう拡張を図っていることにも触れた。
販売戦略については、大企業、中堅企業、中小企業、地方、金融、公共の六つのセグメント別営業体制を継続。佐藤社長は「お客様のコラボレーションをより強化していく」と拡販に向けて意欲を見せた。
説明会には前社長の古市克典会長も出席。顧客の経営層とのリレーション強化、社内の新体制へのスムーズな移行、新プロジェクトに取り組んでいくとした。