SIerは普通、業務ソフトを開発しているが、同時に組み込みソフトも手がけているところはそれほど多くない。市場が限られ、エンジニアを別途揃えなければならないことなどが、ハードルになっているからだろう。

　ところが、中身をよく見ると業務系と組み込み系のビジネス形態は共通する部分が意外に多い。

　例えば携帯電話の開発が盛んなときは、こぞって携帯用のソフト開発の受注に奔走し、薄型テレビが好調ならばそちらに人員をシフトさせる。こうした行動は業務系でも同じで、金融業がよければ金融を攻め、製造業が盛り上がれば急いでそこに軸足を移す。

　両者の間で異なる点もある。業務系のソフトはOSやミドルウェアはオープン化が進み、ある程度開発環境の均質化がなされているが、組み込みソフトの実行環境は依然、多種多様だ。

　だが、組み込み業界でもメジャーなOSやミドルウェア、パッケージソフトが出始めていることから、いずれプラットフォームの寡占化が進むことも考えられる。そうなるとますます似通ってきて、組み込みソフトは“特定なSIer”がやる仕事ではなく、多くのSIerが日常的にこなす仕事のひとつになる日もそう遠くはないのかもしれない。

　仮にそうだとすれば、他社との差別化はますます困難になり、ビジネスは厳しさを増すことになりそうだ。（寶）