「人を動かす」というのは、あらゆる企業・組織に共通するマネジメントの要諦である。なかでも、技術者集団を率いる立場にある人は、個々の能力を最大限に引き出すスキルが強く求められる。

　筆者は、ITコンサルタントであるとともに、企業のIT企画部門の課長職を務めている。これまでに、システム開発、システム統合、さらには“炎上”プロジェクトの問題解決などをこなしてきた人物だ。その経験から導き出した「基礎力」を筆者は、9項目に区分している。

（1）褒める
（2）叱る
（3）ミッション（使命）を認識させる
（4）インセンティブ（報酬）を提示する
（5）コミット（約束）させる
（6）強く期待する
（7）目標を明確に設定する
（8）識者としてアドバイスする
（9）心理的貸しを作る

　以上の「基礎力」を磨くためのエクササイズを、事例中心で解説する。例えば、「プロジェクト管理に失敗した部下に対処する」「問題のある人物を抜てきする」など。「要件定義に協力してもらう」といった、対社外の問題についても言及されている。肩肘張らずに気軽に読めて、現場のマネジメントに役立つ一冊である。


『ITエンジニアのための人を動かす9の基礎力と27のエクササイズ』 
芦屋広太著　日経BP社刊（1800円＋税）