BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』

2010/06/03 15:27

週刊BCN 2010年05月31日vol.1335掲載

 ひと世代から上の年齢層の人たちは、「タダほど高いものはない」という観念が染みついている。それに対して、最近の若者は「タダ」に対して抵抗感をもたない。というよりも、「タダは常識」になっている。その境目には、21世紀のデジタル時代が横たわっている――。リアル店舗では死に筋になっている商品が、ウェブショッピングでは収益の源泉となっている事実を突き止め、「ロングテール(恐竜の尻尾)」という言葉を世に送り出したクリス・アンダーソン。その彼が、「フリー(無料)」に着目し、いかにビジネスとして成立しているのかを、緻密な資料集めと分析によって明らかにした本である。

 「フリー」の誕生は、けっして新しくはない。この本では、フルーツジェリーの素「ジェロ」のレシピ本を無料で配った例(1895年)や、髭剃りのジレットが安全カミソリの本体を無料で配布し、替え刃の需要を生み出した例(同時期)が紹介されている。

 21世紀、モノからサービスへとビジネスの対象が変遷していくなかで、フリー・ビジネスも変質してきた。主役はIT分野に移り、マイクロソフトの不正コピーとの闘い、リナックスとの攻防の経緯が描かれている。現在までの状況をいえば、巨人・マイクロソフトもフリーとは妥協しなければならなかった状況が明らかにされている。これから先、「フリー」が収益につながるビジネスモデルを探ろうと考えるなら、ぜひ読破しておきたい本である。(止水)


『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』
クリス・アンダーソン著
NHK出版刊(1800円+税)
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