旅の蜃気楼

サムスンの牙城でニコンのトップに会う

2010/08/05 15:38

週刊BCN 2010年08月02日vol.1344掲載

【ソウル発】新型の京成スカイライナーに乗った。車輛が新しいから、気分がいい。車内の前方にはデジタルサイネージがある。広告でヴァル研究所の『駅すぱあと』を見た。列車ダイヤ検索分野の草分けのソフトだ。開発者の故・島村隆雄さんを久しぶりに想い出して、嬉しかった。『駅すぱあと』の発売は1988年。開発の経緯を島村さんから聞いたことがある。「駅と駅の間はねぇ、上智大学の学生たちが、歩いて実測しているんですよ」。島村さんとは、いつも明日を語らった。「日本のIT技術・サポート技術の中国や韓国への輸出は、どうすれば道が開けるのか」。彼は何と答えるだろうか。

▼成田空港から大韓航空でソウルに向かった。ニコンイメージングコリアの新社長・梅林富士夫さんに会うためだ。6月に着任したばかりの方である。「ソウルはサムスンの牙城ですね。とくにコンパクトデジカメは強い」。日本の市場とは様相が異なる。ただし、一眼レフの分野はキヤノン、ニコンの順で日本勢が上位を占めている。「このところ、キヤノンさんとのシェアが少し開きましてね」。取材を終えて仁寺洞(インサドン)を案内していただくことになった。昔ながらの観光商店街だ。韓国の風情漂う二階建てが建ち並ぶ。お菓子を売る店、陶器店、レストラン。そぞろ歩きの人たちと体が触れ合う。

▼とあるレストランに入った。「まずはビール、あとは何がいいですか」。日本語が堪能で、韓国のカメラ流通に詳しい営業部長の丁海桓さんが手際よく仕切ってくれる。眞露、マッコリ。料理も次々と出てくる。杯を重ねるうちに会話も弾む。突然、店内が真っ暗になった。「あれっ!?、停電ですよ」「この店だけですね」「そのうちにつくでしょう」「それにしても、お客さんたちは静かですね」「治安がいい証拠ですよね」「まだですかね」。お客がレジで揉め始めた。「なかなか、直りませんね」「どうも電源部分が壊れたようですよ」。私たちも店を出ることにした。店の人が言った。「無料で結構です」。その途端に、お腹が充実感を覚えた。人の心とは単純なものではある。(BCN社長・奥田喜久男)

ニコンイメージングコリアの梅林社長(右)と営業部長の丁さん。このレストランの停電騒ぎのおかげで、思わぬトクをした
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