旅の蜃気楼

白無垢で蘇った“遠い記憶”

2010/11/18 15:38

週刊BCN 2010年11月15日vol.1358掲載

【赤坂発】結婚式の季節だ。街のあちこちで、喜びの人たちに出くわす。社員の結婚式に招かれた。11月3日の東京は晴天に恵まれた。清々しい気持ちで家を出て、乃木神社に向かった。この神社には神職に知り合いが多いし、私は学生の頃から参拝しているので馴染みの深いお社だ。どこの神社もお社は樹木に囲まれて別空間を醸し出している。しかし、乃木神社のそれは一段と凛としている。

▼会社もそうだが、神社もそれぞれの雰囲気をもっている。聞けば、新婦があちこち都内のお社を巡って、乃木神社に決めたそうだ。式は拝殿で執り行われた。新郎新婦と親族が石畳の参道を進む。その両脇には二人を祝う人たちが並ぶ。教会でいえば、バージンロードを歩く感じだ。新婦が勤務していた保育園の20名近くの園児たちが歓声をあげながら参道を進む二人を祝福している。新郎新婦と親族が拝殿に入ると、雅楽が始まる。先ほどとは打って変わって厳かな雰囲気に包まれる。子供たちは目を輝かせて、つい最近まで先生であった新婦の様子に魅入っている。女の子が多い。白無垢の姿に未来の自分を夢見た子もいたのではないか。

▼五十数年前、母親の実家の跡取りが祝言をあげた時の場面が心に浮かんできた。広い座敷で、大きな仏壇を背中に伯父と花嫁になる白無垢の伯母が座っていた。昼間なのに薄暗い印象が強い。その部屋で同じ年齢の従姉妹と三々九度の盃にお酒を注いだ記憶がある。家中が華やいでいた。息が詰まる思いで、外に出た。家の前は砂利道で、道沿いの家の屋根越しに、王子製紙の煙突が見えた。町並みに当時の面影はないが、煙を吐く煙突は今も変わらない。白無垢と子供たちの姿に、遠い記憶がよみがえった。心地のよい想い出が一つ増えた。(BCN社長・奥田喜久男)

新郎新婦は石畳の参道を進む
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