旅の蜃気楼

目に焼きついた“ディープな中国”

2010/12/22 15:38

週刊BCN 2010年12月20日vol.1363掲載

【北京発】2010年は頻繁に中国へ出かけた。飛行機に乗って、中国のあちこちに出かけるのも、旅が好きだからなのだろう。旅に出ながら仕事をする。きっとそのコンビネーションが快適に感じられるのだ。新しい街で初めて出会うのはどんな人だろうか、どんな出来事が待ち受けているのか――そう考えるだけで、ワクワクする。今、北京空港内にいる。未だに駐機している飛行機の中にいる。閉じ込められて4時間が過ぎた。腰が痛くなってきた。強風のために待機している。まだ先の見通しはつかないと、機内アナウンスがあった。

▼中国のあちこちの街では、現地で活躍している日本の人たちに会った。そのたびに元気をもらった。日本に比べておよそ4倍の元気パワーが今の中国にはある。日本に帰ってくると、暗いな、と感じる。そしてまた中国に飛び立つ。これを繰り返すたびに、ディープな中国に入り始める。その旅ごとに味わいが違い、中国の異文化を知ることになる。

▼街の様子を覚えるために歩き続け、地下鉄に乗ることが多い。青島駅から北京南駅まで列車に乗った。地下鉄に乗り換えようとした時、尿意を催してきた。困ったな。年をとるとよくあることだ。トイレを探してホームの端まで来た。と、トイレの個室らしきところにしゃがんで用を足している人がいる。ドアはない。目が合った。「あれっ!?便器はそれしかないぞ」。困ったな、どうしよう。こちらも緊急だしなぁ。視覚、聴覚、嗅覚が総動員している。震えるような数分の出来事であった。そのせいで中国の旅路は機内とトイレの思い出で一杯になった。30年後に覚えている中国の記憶はこの二つではないか。その時の中国はどんな国になっているのだろう。30年間、至近距離からみつめようと思っている。(BCN社長・奥田喜久男)

北京南駅で地下鉄に乗り換えようとした時に“事件”は起きた
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