旅の蜃気楼

“お蔭参り”の地で力を授かる

2011/02/17 15:38

週刊BCN 2011年02月14日vol.1370掲載

【伊勢神宮発】どうしても気力が湧き出でてこない時がある。そんな時には、無性に伊勢に行きたくなる。18歳からの4年間を伊勢で過ごした。この地には青春の喜怒哀楽が凝縮して残っている。伊勢は静かな街だ。街のあちこちに杜があって、そこはたいてい神社だ。こんなに神社の密度の濃い街はほかにない。そのなかで最も大きな神社が伊勢神宮。日本中にある神社の中核的な存在だ。

▼伊勢神宮には内宮と外宮がある。この間は6キロ離れている。時間に余裕のある場合は、古市のコースを歩くと、昔の街の面影を楽しむことができる。民家の玄関に年中飾ってある門松もその一つだ。伊勢神宮は20年ごとに、お社が隣の敷地に建て替えられる行事がある。これを遷宮という。最初に見たのは24歳の時、次は44歳。次回は2013年が遷宮の年だから64歳になる。

▼今年の伊勢神宮は、大勢の人で賑わっている。人、人、人。家族連れや、とくに若い女性の姿が目立った。雑誌などで伊勢神宮がパワースポットに選ばれたこともあって、全国から人が集まってくる。この現象は江戸時代からのものだ。“お蔭参り”といって、60年周期だ。1890年はお蔭参りの年だった。そこから60年周期を2回繰り返すと、2010年はお蔭参りの年に当たる。不思議な巡り合わせだ。

▼伊勢神宮は、御正殿と荒祭宮の2か所をお参りするといい。仏教でいう、阿弥陀如来と、不動明王の関係だ。今回は荒祭宮も人で混んでいた。どうした変化なのだろうか。自信をなくした日本人が伊勢で元気を充電して東アジアに出かける。良い循環だ。伊勢にはもう一つ、元気の元がある。それは御料酒・白鷹だ。内宮を出るとおはらい町がある。この一角にある白鷹三宅酒店には、伊勢神宮にしか納めない酒が置かれている。参拝客はここで呑めます。(BCN社長・奥田喜久男)

パワーの源となる御料酒は、この店で呑める
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