1990年後半のインターネットが普及する途上では、リアルで商品販売を展開する誰しもが、これで商売を奪われる、大打撃を受けると考えたことでしょう。実際、楽天やヤフーなどのEC(電子商取引)サイトが活況を呈し、ネットを活用した商品購入のスタイルは定着しました。しかし、それでリアルの商品販売が大打撃を受けたかというと、あながちそうでもありません。リアルはリアルで、この刺激によって多くのビジネスモデルを生みました。
クラウドコンピューティングも同じことなのでしょうか。米マイクロソフトは、調査会社のIDCに依頼した調査の結果をもとに、「クラウドは2015年までに全世界で1400万人の雇用を創出する」との見解を出しました。日本は現状の155%になると予測しています。
ですが、これには首をひねらざるを得ません。この調査でも、「クラウドが雇用を奪うという誤解がみられます」と記していますが、その誤解は誤解ではなく、多くの人はそうなるとみているのではないでしょうか。
要約すれば、米マイクロソフトの論拠はこういうことでしょう。「クラウドで企業の収益が上がり、新たなビジネスモデルが勃興し、それらで新たな雇用が生まれる」。この希望的論拠を信じ、誤解を誤解たらしめるようなクラウドの発展を待ちたいと思います。(谷畑良胤)
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マイクロソフト、「クラウドは2015年までに1400万人の雇用を創出」との見解を発表メールマガジン「Daily BCN Bizline 2012.3.12」より