【内神田発】山には神が棲むという。本当だろうか。神かどうかはともかくとして、闇夜の山は怖い。昼に見る山でも異様な力を感じることがある。上高地の河童橋から左手方向に目をやると、その山は西穂高、そして奥穂高。そこから前穂高につながる弓状の吊り尾根は優美だ。目の前に大パノラマが広がる。足下には梓川が流れ、空に向かって雄大な山が扇状に広がる。実に伸び伸びする。さらに右手には力強い明神岳につながり、この山はいつ見ても人を寄せつけない力を放っている。明神の命名者も同じように感じたのだろう。神が棲んでいるのかもしれない。

▼上高地の美しさは、四季を織りなす色合いで描いた生きたキャンバスだ。ぜひ、一度は見ていただきたいお山です。河童橋の周辺には山小屋風の宿泊施設がたくさんあって、山歩きをしなくても、この景色を見るための展覧会気分で結構です。ここには正真正銘の帝国ホテルがあって、宿泊代は高いけれども快適です。ハヤシライスが美味しいです。

▼山だけでなく、海にも神が棲んでいるのかもしれない。今年は伊勢神宮の御遷宮(ごせんぐう)がある。10月2日は内宮、10月5日は外宮。遷宮の説明は先に譲るとして、それに先立つ「お白石持」という行事がある。伊勢の北側を流れる宮川で拾い集めた手頃な大きさの白い石を、外宮と内宮の新しいお社の建つ御垣内に敷き詰める行事だ。ただそれだけの行事だが、この行事でしか入れない場所に立ち入ることができる。それは新しくできた御垣内の一番奥に建つ神がおわす御正殿だ。10月の御遷宮までは、神が不在のただの建物。神がいない間に白い石を持って入ることで、近くに寄ることができる。それが許されるのは伊勢に住む人たちだけだ。神領民という言い方もある。その行事に参加するには、前もって禊をしなければならない。

▼5月11日、私は二見浦にある二見興玉神社に参拝して禊をしてきた。このお社は夫婦岩で有名だ。ご祭神は猿田彦大神。この神はその昔、神が天からこの土地に降り立つ時の案内人なので、今でいえば神宮へ皆さんをお連れする道案内人ということになる。さしずめツアーガイドといったお役目だ。私たちの先祖は山にも海にも神が棲むと考えたようだ。 

二見興玉神社に参拝して禊を行った。後方に見えるのが夫婦岩。隣は大学時代の同級生

伊勢といえば「赤福」が有名だが、実は二見浦の「御福餅」のほうが歴史がある

▼そういえば、データセンターのアールワークスのサーバールームに入ったら、「電電宮」という神が祀ってあった。このお札を見たとたん、安心感が湧き上がってきた。神代の時代も今も変わらないのかしら。(BCN会長・奥田喜久男)
2013年5月28日記


アールワークスのサーバールームには「電電宮」のお札が祀ってある