『週刊BCN』の連載「営業マネージャーたちの最前線」では、IT企業で奮闘している営業リーダーに、営業現場での様子やマネージャーとしての工夫などを語っていただいています。ここでは、紙面では掲載しきれなかったエピソードをご紹介します。 *「営業マネージャーたちの最前線」本編は『週刊BCN』●号(●月●日号)に掲載しています。ぜひご覧ください。

[語る人]

●profile..........
阿部 牧子(あべ まきこ)
 1989年、NTTデータに入社。5年間、開発現場でエンジニアとして活動。6年目に営業に配属され、ソリューション提案に従事。13年目から課長として新規事業推進に携わり、16年目に部長に昇格して新規顧客の開拓を担当。その後、外資系コンサルティングファームへの転職を経て、NTTデータに復帰し、現職に就く。

●所属..........
NTTデータ
公共システム事業本部
第一公共システム事業部
営業部 第一営業担当
部長

●担当する商材.......... 公共向けのシステム構築
●訪問するお客様.......... 公共分野の大手顧客
●掲げるミッション.......... 既存システムの更改と新規開拓(年間の受注目標は40億円)
●やり甲斐.......... 新たな領域の開拓を任せてもらい、新規事業をかたちにすること
●部下を率いるコツ.......... 「本人の長所」を示唆してモチベーションを高める
●リードする部下.......... 12人

 1989年にNTTデータに入社して、13年目に課長に、16年目に部長に昇格し、通常のキャリアパスよりも早く、意志決定にかかわる権限を与えられた。これは、もちろん推測にすぎないが、ずっと携わってきた新規事業の立ち上げの手腕が評価されたからではないかと思う。

 新しいビジネスの立ち上げにはあらゆるリスクが伴い、また、売り上げに貢献するまでに時間がかかる。入社して6年目に開発から営業に異動になり、ITソリューションの顧客開拓を担当した。ITソリューションは、目に見える商品ではないので提案しにくい。お客様の獲得プランを上司に説明したときに、「このプランはリスクが高い。本当にやるのか」と厳しく確認されたとき、私は「やってみせます」とその場で誓った。最初は提案が受注になかなかつながらなかったが、長いスパンで目標を設定して、達成に向けて着々と動いたおかげで、計画通りに新規顧客の開拓に成功し、上司との約束を守ることができた。

 こうして新しい事業に取り組んでいくなかで次第に評価されていったのだが、それでも、私は少しずつ当社の企業文化に不満を抱くようになっていた。NTTデータは開発部門の権限が強い会社で、営業は基本的に彼らの意見に従わなければならない。営業部長になってからも、こちらがお客様の要望を説明すると、技術が「ダメだ。実現できない」と否定する場面があるなど、営業がお客様と開発部門の板挟みになってしまうことが多かった。悩んだ私は営業が強い会社に行きたいと考え、20年間のNTTデータでのキャリアに終止符を打ち、外資系コンサルティングファームへの転職を決めた。

 転職先では、IT戦略のコンサルタントを担当した。ところが、しばらく働いてみると、社員のチームに対するロイヤリティが低いことに違和感を覚えた。社員一人ひとりは非常にスキルが高いのだが、みんな自分のキャリアだけを考えていて、チームプレイがない。私はこうした社風が合わず、NTTデータへの復帰を決心した。そしてNTTデータに戻り、外資系で学んだ「いいこと」を生かしながら、あらためて当社で営業部長として活動することになった。

 外資系企業では、管理職を含めた従業員全員が、全方位から評価される。つまり、部下からの評価も一つの基準になるわけだ。そのことから私が学んだのは、自分の市場価値を知ることの大切さだった。私はいま、部下に対して「NTTデータの看板を外しても残るあなたの価値は何か」を問い、各自に自分のスキルや強みをはっきりと意識させている。こうした外資系企業の美点を日本企業のチームプレイのすばらしさに融合し、どの企業でも生き残ることができる人材を育てるようにしている。