流通を制する者は市場を制す

 流通の視点から、企業の動きや盛衰をみていくことで、少子高齢化やグローバル化、情報技術の革新など、現在の日本経済を取り巻く潮流を理解する一冊。30年以上にわたって企業活動の現場をみてきた経済学者のフィールドワークの成果を、マクロとミクロの両方からわかりやすくまとめている。

 流通は、経済のさまざまな側面と密接につながっている。上流では製造業、下流では小売業と消費者。これらをつなぐロジスティクス。例えば高齢化社会になって社会のありようが変われば、消費が変わり、その現場である都市の姿が変わり、店舗が変わり、メーカーがつくるものも変わっていく。こうしたさまざまな経済主体に関わるのが、流通なのだ。製造から小売りまで、流通をも取り込んだユニクロの成功をみれば、グローバル化は必然だとわかるし、アップルのiPhoneの売れ行きをみれば、流通を支配下に置くチャネルリーダーの重要性が理解できる。すでに日本中にあるコンビニエンスストアは、業態の成熟化ゆえに、日々新たなビジネスを模索している。市場を深掘りする時期に入っているのだ。

 こんなにわかりやすくていいのか、という疑問もなくはないが、日本経済の入門書としては最適。高度成長からバブル経済とその崩壊を経て、成熟化・グローバル化に至るまでの日本経済の歩みが、整理されたかたちで頭に入ってくる。「流通を制する者は市場を制す」という図式は、昔もいまも変わらない。(叢虎)


『流通大変動 現場から見えてくる日本経済』
伊藤元重 著
NHK出版 刊(780円+税)