BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ヤンキー化する日本』

2014/05/29 15:27

週刊BCN 2014年05月26日vol.1531掲載

日本人が受け継いできた遺伝子

 精神科医である著者が「引きこもり」を研究していたとき、その対極にあったのが、コミュニケーションの究極の勝者「ヤンキー」だった。そのヤンキーの気質が、日本の文化や国民性に普遍的にみられることに気づいた著者は、2年ほど前から、新聞、雑誌、そして著書でヤンキー文化論を展開。今回は、歴史学者の與那覇潤、建築家の隈研吾、ジャーナリストの溝口敦、小説家の海猫沢めろんなど、6名との対談でヤンキー文化の強さと多面性を浮かび上がらせている。

 ヤンキーは、もちろん英語でアメリカ人を指すYankeeが語源だが、日本では俗語として独自の意味で使われてきた。本書の定義によれば、「バッドセンスな装いや美学と、『気合い』や『絆』といった理念のもと、家族や仲間を大切にする一種の倫理観とがアマルガム的に融合したひとつの“文化”」だそうだ。「バッドセンス」「キャラとコミュニケーション」「アゲアゲのノリと気合い」「リアリズムとロマンティシズム」「角栄的リアリズム」「ポエムな美意識と女性性」が特徴で、これが現在の日本で拡散しつつあるさまを検証しようというのが、本書の眼目だ。

 読み進むうちに気づくのは、ヤンキー文化が存在しているのは、決して現代だけではないということ。太平洋戦争当時や戦後長く続いた政治体制、さらにさかのぼれば、東照宮や桂離宮のなかにもその要素が散りばめられている。日本人は、「ヤンキー遺伝子」(海猫沢めろん)をもっているのだ。目の前を通り過ぎるヤンキーたちを嗤(わら)うのは簡単だが、それは自分を見て嗤っているのと同じなのである。(叢虎)


『ヤンキー化する日本』
斎藤 環 著
KADOKAWA 刊(800円+税)
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