BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『失敗は「そこ」からはじまる』

2015/02/19 15:27

週刊BCN 2015年02月16日vol.1567掲載

理由に気づけば判断は変わる

 人間は、周囲の人がどれだけアドバイスをしても間違った判断を下したり、人としての倫理に反する行動を取ったりすることがある。なぜ、そうなってしまうのかを行動心理学や組織論などから探り、成功へと導く正しい意志決定をするための原則を明らかにしたのが本書だ。著者は、米国ハーバード・ビジネススクールの交渉術・組織・市場ユニットに所属する経営学の准教授。間違った判断や行動が「脱線」を呼び、その脱線事例を引き金に話を振って、著者たちが取り組んできた多くの実証実験と先人たちの知見をもとに、事例に挙げた失敗行動の理由を解き明かしていくという手法で、読者を飽きさせない。

 2008年にマイクロソフトによる買収を拒否したヤフー、1990年代のDECの凋落、検索エンジン「パブサブ」の創業者たちの争い、自動検査機器大手のテラダインのプロジェクトマネジメント、モバイルアプリ開発のスカベンジャーなど、IT業界だけでも興味深い脱線もしくは脱線回避事例がいくつも並ぶ。

 著者は、脱線の理由を「自分の内面に由来する力」「他者との関係に由来する力」「外の世界に由来する力」の三つに分類して要因を分析。例えば「内面」では、間違った自己イメージの構築や、感情に流されること、視野の狭さなどを脱線理由に挙げる。少なくとも成功を目指している人は、脱線の理由に気づけば、その判断・行動を変えようとする。意志決定で後悔しないために、すべてのマネジメント層に読まれるべき好著だ。(叢虎)


『失敗は「そこ」からはじまる』
フランチェスカ・ジーノ 著/柴田 裕之 訳
ダイヤモンド社 刊(1800円+税)
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