今から20年ほど前のパソコン全盛期、電機メーカーがこぞってシェア争いを展開していました。そのとき印象に残った言葉は「シェアはほしいが、シェアだけではメシは食えない」――。パソコン事業を担当するメーカー幹部のジレンマでした。
安くていいものを出せばシェアは獲れるが、利益が出なければ事業として成り立たない。シェアを気にせず利益だけを追求するという考え方もありますが、電機製品は往々にしてシェアを失うと、利益も失ってしまいます。
台湾の大手EMS(製造受託サービス)ベンダーの新金宝グループは、日本円換算で10万円台から手に入る普及価格帯の3Dプリンターを投入し、あれよあれよという間に世界で約30%のシェアを獲りました。
この会社は、親会社を含むグループ全体で売上3兆円規模の大手EMSベンダーで、安くていいものを大量生産するEMSベンダーならではの能力を遺憾なく発揮。自社ブランドの3Dプリンター事業を軌道に乗せようとしています。
デジタル時代の電機製品は“シェアを獲って、なおかつ利益も出す”ことが勝ち残る道。電機メーカーにとって、この2つの両立は、避けては通れない「法則」のようなものなのかも知れません。(安藤章司)
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新金宝グループ 総経理 沈軾栄 世界を席巻するチャンスをつかむメールマガジン「Daily BCN Bizline 2015.4.2」より