マイナンバー(社会保障・税番号)制度は、商用利用を視野に入れた制度設計になっていると言われています。しかし、あるシンクタンクの研究員は「商用利用の応用範囲は限られるのではないか」と懐疑的にみています。

 つまり、大多数の民間企業にとって、自分たちの顧客が税金をどれだけ支払っているか、社会保障はどんな状態なのか、もっといえば戸籍はどうなのか、そもそもどこの国籍なのかなどは、ビジネスにほとんど関係ない――というのが、その理由です。

 「商品やサービスの対価として、ちゃんとお金を払ってくれる人」こそが大切なお客さんであり、その人の厳密な特定や背景は、多くの民間企業にとってどうでもいいことなのです。金融業などは金利や保険金の“支払い”が発生するため個人の特定は不可欠ですが、多くの民間企業は顧客への“支払い”は基本的にありません。

 マイナンバーは寸分のぶれもなく個人を特定するための仕組みです。一方で、(お金を支払ってくれさえすれば)とりたてて個人を厳密に特定する必要がないのが民間企業のビジネスであるため、用途と目的が「一般的な商用利用」とは合いにくい。

 商用利用に際して、マイナンバー活用の決定打となるようないいアイデアが出てくることを願うばかりですが、少なくとも、この制度の実施でうれしいのは「税金の捕捉率が高まる国税庁だけ」とならないようにしてもらいたいものです。(安藤章司)

【記事はこちら】
<迫り来る10月!熱気を帯びるSIerのマイナンバービジネス最前線>第1回 中小企業の多くが不慣れ「この半年が勝負
メールマガジン「Daily BCN Bizline 2015.5.14」より