今日のひとことWeb版

競合ベンダーへの口撃

2015/11/13 15:26

 米オラクルのラリー・エリソン会長兼CTOは、大手ITベンダーではもはや数少なくなった創業経営者であり、強気、かつ競合ベンダーに対する挑発的なメッセージを躊躇なく発することができる、またそれが似合ってしまう人物という印象があります。実際、彼が登場する講演などでは、聴衆がそれを望んでいる雰囲気すらあると感じます。

 サンフランシスコで開かれた同社の年次イベント「Oracle Open World 2015」でも、“エリソン節”は健在でした。すべてのレイヤで競合するライバルと認めたのは、マイクロソフトのみ。「IBMやSAPはもはやクラウドの世界では競合ではない」と切り捨て、セールスフォース・ドットコム、ワークデイを新時代の仮想敵として挙げましたが、将来的には彼らも敵ではないと考えているようです。

 ただ、このメッセージ、言葉通りに受け取ってしまっては市場を見誤るかもしれません。クラウド時代の覇権を握ろうというエリソン会長の強い意志が現れているのは確かですが、ビジネスの現場では、IBMやSAPもオラクルにとってまだまだ手強いライバルのはず。オラクルがクラウドビジネスを拡大させていくためには、彼らから顧客を奪っていかなければならない側面があるのは間違いないからです。

 エリソン会長の話を聞きながら、同じようなことを国産ベンダーの経営者が公の場で発言したらどうなるか想像してみましたが、あまり鮮明にはイメージできませんでした。とくに国産大手ベンダーの経営者は、自分の発言が「嘘にならない」ように最大限の注意を払っているようにみえます。ただ、それゆえに、ミスリードを恐れずに強いメッセージを打ち出すエリソン節と比べて、伝えたいことがわかりにくくなってしまう可能性が高いといえるかもしれません。両者の良し悪しを論ずるつもりはありませんが、企業文化やメンタリティの確かな違いを痛感した取材でもありました。(本多和幸)

【記事はこちら】
米オラクル Oracle Open World 2015 クラウド時代の覇者を目指し トップギア エリソン会長「もはやIBM、SAPは競争相手ではない」
メールマガジン「Daily BCN Bizline 2015.11.13」より
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